公益事業

公益事業

1 宗教法人の公益事業

   宗教法人は「公益事業」を行うことができます(宗教法人法6条1項)。
   宗教法人が、新たに「公益事業」を行うには、①「法人規則の変更」の手続きを行い、②所轄庁(都道府県知事または文部科学大臣)の「規則変更の認証」を受け、③「目的変更の登記」を行い、④「登記完了届」をする必要があります。
   宗教法人が行う公益事業は、「世俗の事業」であり、「宗教活動」ではありません。
   あくまでも「宗教法人の事業」であって、「宗教団体の事業」ではないことを理解して、始める必要があります。

 

2 宗教活動と公益事業

   「宗教」「祭祀」は「公益」の典型であり、例示です(民法33条1項)。
   「宗教法人の公益性」のために「公益事業」を行わなければならないというのは誤解です。
   「宗教活動」は「公益の活動(公益事業)」です。
   もちろん、「宗教活動」は「(世俗の事務を行う)宗教法人」の事業ではありません。
   宗教法人は、「公益事業」を行わなくても「公益性」が否定されることはありません。

 

3 公益事業と法人税

   法人税は、宗教法人については、「収益事業」を行う場合に限り、「収益事業」部分についてのみ対象となります。
   したがって、「公益事業」は、当然、非課税となるはずです。
   しかし、「宗教活動」でさえ「収益事業」とみなされているほどですから、「公益事業」はなおさら「収益事業」とみなされる可能性があります。
   「公益事業」を行うには、慎重な判断が必要です。

 

4 公益事業と固定資産税

   固定資産税は、宗教法人の所有する境内建物・境内地には課税することができないものと規定されています(地方税法348条2項3号)。
   しかし、税務当局は「宗教活動に供用する部分のみが非課税」として、「収益事業」に供用する部分はもちろん、「公益事業」に供用する部分も課税対象である、としています。
   したがって、「公益のためだから」と、安易に「公益事業」を行うことは危険です。
   さらに、「公益事業」とは言えなくても、「宗教活動でない」なら、課税対象であるとされますから、注意が必要です。

   したがって、宗教法人として公益事業を行うことはお勧めできません。
   そもそも、宗教法人として公益事業を行う必要があるのでしょうか、見当が必要です。

 

5 防災・災害対策への協力

   宗教法人が国や地方公共団体の防災や災害対策に協力して、防災用品を保管し、食水を備蓄し、緊急避難用品を備えると、「宗教活動ではない」という理由で、固定資産税が課される危険があります。
   営利企業の場合には、これらを行うと「減税」の対象となるのですが、宗教法人の場合には、「増税(非課税から課税への大増税)」となります。まったく理不尽です。

   したがって、宗教法人として、安易に「防災・災対協力」を行うことはお勧めできません。理不尽です……。

 

6 公共施設への協力

   境内地を電力線や電話線が通過し、電柱が設置されていると、「宗教活動ではない」という理由で、境内地の非課税が否定されるおそれがあります。
   上下水道の水道管、農業用水路、生活排水路なども同様でしょう。
   境内地に「公衆トイレ」「水飲み場」「休憩所」などを設置することも同様です。

   したがって、宗教法人としては、安易に公共協力をするべきでないという結論になります。おかしな話ですが……。

 

7 地域社会への協力

   宗教法人が、地域の町内会、こども会、老人会、消防団、民生委員などに協力して、境内建物や境内地の一部を無償で利用させると、「宗教活動ではない」という理由で、固定資産税が課されることになります。
   まったく理不尽なことですが、地域住民に喜ばれることをすると、課税されることになるというのです。

   したがって、宗教法人は、地域社会に協力できない、ということになります。納得できませんが……。

 

8 本来は「宗教活動」

   上記の事例は、いずれも、本来「宗教活動そのもの」や「宗教活動の一部」であるものです。
   誤った理解や推奨から、「公益事業」に引かれることなく、「本来の宗教活動」として展開することをお勧めします。
   具体的な活動や状況については、ぜひ、ご相談ください。

 

9 子法人による「公益事業」

   宗教法人が全額または一部を出資する子法人によって公益事業を展開することもあります。
   社会福祉法人による社会福祉事業、学校法人による私立学校、医療法人による診療所・病院などです。
   また、一般社団法人や一般財団法人による各種事業も考えられます。
   子法人を利用する場合、宗教法人の境内建物・境内地の固定資産税非課税は受けられません。
   子法人は、宗教法人とは、基本的な論理構造が異なることを念頭におかなければなりません。
   子法人についての、慎重な検討が必要です。
   事前にご相談いただき、十分な準備を尽くすことが必要です。

 

 

 

桜