公益事業

目 次

   Ⅰ 宗教法人と公益事業
     1 宗教法人の公益事業
     2 宗教活動と公益事業
     3 「公益」「公益事業」「公益法人」とは何か
   Ⅱ 宗教法人の公益事業と税
     1 公益事業と法人税
     2 公益事業と固定資産税
   Ⅲ 宗教法人の社会貢献・社会協力
     1 防災・災害対策への協力
     2 公共施設への協力
     3 地域社会への協力
     4 本来は「宗教活動」
   Ⅳ 宗教法人による公益事業の展開
     1 子法人による「公益事業」
     2 公益事業の具体例 

・  

   Ⅰ 宗教法人と公益事業

1 宗教法人の公益事業

  ⑴ 宗教法人の公益事業

      宗教法人は、「公益事業」を行うことができます(宗教法人法6条1項)。

  ⑵ 公益事業を行うには

    ① 「公益事業を行うことができる」とは

      ㋑ 「宗教法人は公益事業を行うことができる」と言っても、
      ㋺ 何の手続きもしないで、行うことができるわけではありません。

    ② 新たに「公益事業」を行うには、

      ⅰ 規則の変更
      
  Ⓐ 規則の定めに従い、責任役員会、総代会、信徒総会などを開き、
        Ⓑ 規則の「目的」に、「公益事業」として、具体的な事業名を規定する
        Ⓒ 「規則の変更」を決議しなければなりません。

      ⅱ 規則変更の認証申請
        Ⓐ 所轄庁(都道府県知事/文部科学大臣)に、「規則変更の認証」を申請しなければなりません。
        Ⓑ 責任役員会などの議事録、公益事業に関する書類などを添付しなければなりません。
        Ⓒ 規則の変更は、所轄庁から認証書の交付を受けたときから効力を生じます。

      ⅲ 変更登記申請
        Ⓐ 認証書の交付を受けた後、登記所(法務局)に、「宗教法人変更登記」を申請しなければなりません。
        Ⓑ 認証書などを添付して、公益事業を追加する目的変更の登記を受けなければなりません。
        Ⓒ 登記の完了後、登記事項証明書の交付を申請します。
        Ⓓ 登記事項証明書を添付して、所轄庁に、「登記完了届」をしなければなりません。

    ③ 宗教法人が無償で行う公益事業であっても、

      ㋑ 法律上、許認可その他の手続きが必要なものがあります。
      ㋺ 関係者の許可・同意・承諾などを得なければならない場合があります。
      ㋩ 一定の資金や施設・設備などを備える必要があるものもあります。 

  ⑶ 世俗の事務としての公益事業

     ㋑ 「宗教法人が行う公益事業」は、「世俗の事務」であり、「宗教活動」ではありません。
     ㋺ あくまでも、「宗教法人の事業」であって、「宗教団体の事業」ではありません。

  ⑷ 宗教団体の公益活動

     ㋑ 「宗教団体」が「宗教活動の一環」として、「公益活動」を行うこともできます。
     ㋺ 「宗教団体の公益活動」は、「宗教法人の事業」ではありません。
     ㋩ 「宗教団体」が公益事業を始めるには、所轄庁への申請などの行政手続は必要ありません。
     ㋥ ただし、一切の手続きが必要ないのではありませんから、注意が必要です。
     ㋭ 上記⑵の③で例示した手続きは、宗教法人であれ、宗教団体であれ、必要となります。

  ⑸ 「宗教法人の公益事業」と「宗教団体の公益活動」

     ㋑ 「公益事業」は、すべて「宗教法人の事業」として行わなければならないと思われていますが、誤解です
     ㋺ 「宗教法人として公益事業」を行うと、境内地・境内建物に「固定資産税が賦課されることになります。
         (問題点は、「財務会計」「宗教法人の課税問題」のページをご参照ください。)
     ㋩ 「宗教団体の公益活動」は、「宗教活動とは別の公益事業」ではありません。
     ㋥ 「宗教団体の公益活動」は、「宗教活動の一環」であり、「宗教活動」そのものです。
     ㋭ 両者の区別を理解して、相応しい対応を取ることが必要です。

2 宗教活動と公益事業

  ⑴ 法人の基本規定

     ㋑ 「法人」制度の法律上の根本は、民法にあります。
     ㋺ 民法には、3つの種類の法人があげられています。
       Ⓐ 「学術技芸慈善祭祀宗教その他の公益を目的とする法人」
       Ⓑ 「営利事業を営むことを目的とする法人」
       Ⓒ 「その他の法人」

  ⑵ 「公益」の典型としての「宗教」

     ㋑ 民法は、「学術、技芸、慈善、祭祀宗教その他の公益」と規定しています。
     ㋺ つまり「祭祀」「宗教」は、「公益の典型例」なのです。
     ㋩ そもそも、口語体に変更される前の民法では、「祭祀宗教、学術、技芸、慈善其ノ他公益」とされていました。
     ㋥ 「祭祀」「宗教」こそ、「公益」の典型の筆頭だったのです。

  ⑶ 「宗教活動」がそのまま「公益事業」

     ㋑ したがって、「宗教活動」がそのまま「公益事業」なのです。
     ㋺ 「宗教法人が公益法人であるためには、何か特別な公益事業を行わなければならない」というのは、誤解です
     ㋩ 当然、宗教活動以外の公益事業を行わなくても、「宗教の公益性」が否定されることはありません。

3 「公益」「公益事業」「公益法人」とは何か

  ⑴ 民法の「公益」

     ㋑ 民法では、「学術、技芸、慈善祭祀、宗教その他の公益」と規定し、
        「宗教」「祭祀」を「公益」の典型例としています。
     ㋺ したがって、「宗教活動」はそのままで、「公益活動」「公益事業」です。。
     ㋩ したがって、「宗教団体」はそのままで、「公益団体」です。
     ㋥ したがって、「宗教法人」はそのままで、「公益法人」です。

  ⑵ 法人税法の「公益法人等」

     ㋑ 法人税法では、「宗教法人」を「公益法人等」の一つと定めています。
     ㋺ したがって、「宗教法人」は、特別な事業を行うまでもなく、「公益法人」です。

  ⑶ 公益法人法の「公益法人」

     ㋑ 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(公益法人法)では、
       Ⓐ 「学術、技芸、慈善その他の公益」に関する事業で、
       Ⓑ 不特定多数の利益増進に寄与する
       Ⓒ 別表に掲げる種類の事業を「公益目的事業」としています。
     ㋺ 別表に掲げる種類の事業として、「宗教」に関するものは、
        「信教の自由の尊重・擁護」を目的とする事業があげられています。
     ㋩ 公益法人法では、
       Ⓐ 公益目的事業を行う一般社団法人は、
           公益認定を受けて「公益社団法人」となり、
       Ⓑ 公益目的事業を行う一般財団法人は、
           公益認定を受けて「公益財団法人」となります。
       Ⓒ 公益社団法人と公益財団法人を合わせて「公益法人」と呼びます。
     ㋥ 民法とは異なり、「宗教」は「公益」となりませんから、
       Ⓐ 公益法人は「宗教」を目的とすることができません。
       Ⓑ 「信教の自由の尊重・擁護」を目的とするに限ります。
     ㋭ 一般社団法人・一般財団法人は「宗教活動」を行うことができますが、
         公益社団法人・公益財団法人は「宗教活動」を行うことができません。 

  ⑷ 宗教法人法の「公益事業」

     ㋑ 宗教法人法においては、宗教法人は、
       Ⓐ 宗教活動を行う宗教団体の財務管理その他の世俗の事務を行うほか、
       Ⓑ 「公益事業を行うことができる」と定めています。
     ㋺ したがって、「公益事業」とは「宗教活動以外のもの」を意味しています。

  ⑸ 注意したい「公益」という用語

     ㋑ このように、「公益」という用語は、法律ごとにそれぞれ異なって用いられています。
     ㋺ 他の法律で「公益」とされているものを、別の法律の「公益」にあてはめると間違いです。
     ㋩ 「宗教法人は公益法人である」から「公益事業を行うべきである」というのは全くの間違いです。
     ㋥ 宗教法人は公益法人の一つですが、公益事業を行う必要はありません。
     ㋭ 宗教法人が公益事業を行うと、
         固定資産税の非課税特権が剥奪されて、課税されることになりかねません。 

・  参考文献: 洗建・櫻井圀郎『宗教と公益』(東京都宗教連盟)   

   Ⅱ 宗教法人の公益事業と税

1 公益事業と法人税

  ⑴ 非課税の宗教法人

       原則として、宗教法人は、法人税の対象外とされています。

  ⑵ 法人税が課される場合

     ㋑ 例外として、宗教法人が「収益事業」を行う場合に限り、「収益事業」の部分についてのみ法人税の対象となります。
     ㋺ したがって、「公益事業」は非課税となります。

  ⑶ 公益事業で法人税

     ㋑ しかし、「宗教活動」でさえ「収益事業」とみなされていることもあるのが現状です。
     ㋺ 「公益事業」であればなおさら、「収益事業」とみなされる心配があります。
     ㋩ したがって、「公益事業」を行うには、慎重な検討が必要です。

2 公益事業と固定資産税

  ⑴ 境内地・境内建物の非課税

      宗教法人の境内建物・境内地は、固定資産税・都市計画税が非課税とされています(地方税法348条2項3号)。

  ⑵ 税務当局の解釈

      しかし、税務当局は、「すべての境内地・境内建物が非課税ではない」としています。

  ⑶ 非課税となる部分

     ㋑ 税務当局の解釈は、「宗教活動に供用する部分のみが非課税となる」というものです。
     ㋺ つまり、宗教活動に使っている部分だけは非課税となるが、それ以外の境内地・境内建物には課税するということです。

  ⑷ 課税対象となる部分

     第一に、「収益事業」に供用する部分は課税対象となります。
     第二に、「公益事業」に供用する部分も課税対象となります。
     第三に、その他「宗教活動以外」に供用する部分も課税対象となります。

  ⑸ 公益のためなら課税

     ㋑ したがって、「公益のためだから」「社会のためだから」「人々のためだから」などと、
         安易に「公益事業」を行うと、固定資産税が課されることになります。
     ㋺ 営利企業の場合は、公益のために供用すると減税・免税とされることがありますが、宗教法人は逆です。
     ㋩ 「営利法人なら減税公益法人なら課税」とはおかしなことです。

  ⑹ 公益事業に要注意

     ㋑ したがって、安易に、宗教法人として公益事業を行うことは、お勧めできません。
     ㋺ そもそも、宗教法人として公益事業を行う必要があるのか、十分な検討が必要です。

   Ⅲ 宗教法人の社会貢献・社会協力

1 防災・災害対策への協力

  ⑴ 宗教法人の本務

    宗教法人は、「宗教団体の財務管理など世俗の事務」を行うのが本務です。

  ⑵ 防災・災対協力すると

    ① 宗教法人が、国や地方公共団体の防災や災害対策に協力すると……
    ② 宗教法人が、地域社会の防災や災害対策に協力すると……
    ③ 宗教法人が、防災用品を保管し、非常食水を備蓄し、緊急避難用品を備えると……

  ⑶ 固定資産税が賦課される

    ① 「宗教活動ではない」という理由で、固定資産税が課されます。
    ② 営利企業の場合には「減税」となるのですが、宗教法人の場合には「課税」となります。

  ⑷ 信者のためなら非課税

    ① 当局の説明は、防災・災害対策がもっぱら「信者のためなら非課税」ということです。
    ② しかし、防災・災害対策が「地域住民や被災者・困難者のためなら課税する」というのです。

  ⑸ 防災・災対協力できない

    ① 宗教法人は「防災・災対協力をするべきではない」というのが政府の方針なのでしょうか。
    ② まったく理不尽ですが……。

2 公共施設への協力

  ⑴ 電気・ガス・水道

    ① 境内地を公共の「電力線」や「電話線」が通過していると……
    ② 境内地に「電柱」が設置されていると……
    ③ 境内地を「上下水道の水道管」「農業用水路」「生活排水路」などが、設置されていると……

  ⑵ 公衆トイレ

    ① 境内地に「公衆トイレ」「水飲み場」「休憩所」などが設置されていると……
    ② 境内地に「公民館の案内看板」「町内の掲示板」などが設置されていると……

  ⑶ 固定資産税が課される

    ① なんと、「宗教活動ではない」という理由で、境内地の非課税が否定されてしまうのです。
    ② つまり、公共の役に立つことをすると、課税されるのです。

  ⑷ 公共協力はすべきでない(?)

    ① したがって、宗教法人としては、「公共協力をするべきでない」という結論になります。
    ② まったくおかしな話ですが……。

3 地域社会への協力

  ⑴ 地域社会との共生

      地域社会にある宗教団体は、地域住民のことを考え、地域社会と共に生きようとしています。

  ⑵ 町内会・こども会・消防団

    ① 地域の「町内会」「こども会」「敬老会」「婦人会」「消防団」「民生委員」などに協力して、
        境内建物や境内地の一部を無償で利用させると……
    ② 「宗教活動ではない」という理由で、固定資産税が課されることになります。

  ⑶ 疑問の課税

    ① まったく理不尽なことですが、地域住民に喜ばれることをすると、課税されることになるのです。
    ② したがって、宗教法人は「地域社会に協力すべきではない」ということになります。
    ③ 納得できませんが……。

4 本来は「宗教活動」

  ⑴ 本来「宗教活動」

      上記の事例は、いずれも、本来「宗教活動そのもの」や「宗教活動の一部」であるものです。

  ⑵ 誤った理解

    ① 「誤った理解」や「誤った推奨」から、「公益事業」とすることは危険です。
    ② 「本来の宗教活動」として展開することをお勧めします。

  ⑶ ご相談を

      具体的な活動や状況については、ぜひ、ご相談ください。

   Ⅳ 宗教法人による公益事業の展開

1 子法人による「公益事業」

   ⑴ 宗教法人が全額または一部を出資する子法人によって公益事業を展開することもあります。
   ⑵ たとえば、
     ① 「社会福祉法人」による「保育園」「老人ホーム」「介護センター」など
     ② 「学校法人」による「幼稚園」「専門学校」「各種学校」「大学・大学院」など
     ③ 「医療法人」による「診療所」「病院」など
     ④ 「一般社団法人」「一般財団法人」による各種の事業
     ⑤ 「株式会社」による各種の事業
   ⑶ 子法人を利用する場合、
       宗教法人の境内建物・境内地の固定資産税非課税は受けられません。
   ⑷ 子法人は、
     ① 宗教団体・宗教法人とは、基本的な論理構造が異なることを念頭におかなければなりません。
     ② 子法人についての、慎重な検討が必要です。
     ③ 事前にご相談いただき、十分な準備を尽くすことが必要です。

2 公益事業の具体例

  ⑴ 保育・教育

    ① 宗教を基礎とした学校(学校教育法の「学校」)
       ㋑ 幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等学校
       ㋺ 大学・大学院
       ㋩ 専門学校・専修学校
       ㋥ 各種学校
    ② 宗教を基礎とした保育・教育施設
       ㋑ 保育所・幼児園 
       ㋺ 学童保育・学習塾
       ㋩ 国家試験・資格試験・入学試験などの準備校
       ㋥ 技芸技術(書道・音楽・絵画・司会など)の修練校
       ㋭ 生活知識(料理・茶道・外国語・接待など)の教授校
    ③ 宗教学校
       ㋑ 神学校・聖書学校
       ㋺ 僧院・仏教学院
       ㋩ 神職養成所
       ㋥ マドラサ(イスラーム神学校・クルアーン学校)
       ㋭ 信徒学校
    ④ 宗教を基礎とした研究施設
       ㋑ 研究所
       ㋺ 博物館・美術館
       ㋩ 図書館 
    ⑤ 宗教を基礎としたその他の施設  

  ⑵ 医療・保健

    ① 病院・診療所
    ② 薬局・薬剤店・漢方薬局
    ③ 鍼灸院・整体院・マッサージ院
    ④ 神癒師・宗癒師
    ⑤ カウンセリング

  ⑶ 社会福祉

    ① 児童福祉施設
    ② 老人福祉施設
    ③ その他 
      ㋑ 断食・禁酒・禁煙 
      ㋺ ギャンブル等依存症対策 
      ㋩ 生活改善        

  ⑷ 書籍の出版

    ① 宗教団体・宗教法人においては、 
      ㋑ 宗教活動として、書籍の出版は重要な位置を占めていますが、 
      ㋺ 公益事業として、展開することもあり、 
      ㋩ 収益事業として、営むこともあり得ます。
    ② 書籍の出版に当たって必要なのが、次の2つの図書コードの取得です。 
      ㋑ 「ISBN出版者記号
      ㋺ 「書籍JANコード」  
    ③ 書籍を全国の書店に流通させるには、次の方法があります。2以上の手段を併用することも可能です。
      ㋑ 「直接販売
      ㋺ 個々の書店への「直接販売委託」 
      ㋩ 取次店への「配本委託
      ㋥ アマゾンなどへの「販売委託
      ㋭ 「電子書籍化」  

  ⑸ 飲食・宿泊

    ① こども食堂 
    ② 無料給食・低額給食 
    ③ 無料宿所・低額宿所  
    ④ 災害時の被災者給食宿所 
    ⑤ 災害時の帰宅困難者給食宿所 

  ⑹ 通信・運輸

    ① Wi-Fi 
    ② ウェブページ、ホームページ 
    ③ ドローン 
    ④ 自動車・船舶 
    ⑤ バルーン

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