宗教法人の課税問題

宗教法人税金

宗教法人の課税問題

Ⅰ 法人税法の「収益事業」

 1 「法人税」とは

  ⑴ 納税義務
   ⅰ 「法人」は「法人税」を納める義務がある。
   ⅱ 「法人」=「内国法人」+「外国法人」
   ⅲ 「内国法人」
    <イ> 「公共法人」
    <ロ> 「公益法人等」
    <ハ> 「協同組合等」
    <ニ> 「普通法人」
    <ホ> 「非営利型法人」
    <ヘ> 「人格のない社団等」
   ⅳ 「公益法人等」
       非営利型一般社団法人、医療法人、学校法人、弁護士会
       健康保険組合、公益財団法人、厚生年金基金、社会福祉法人
       宗教法人、商工会議所、日本赤十字社、労働組合など
   ⅴ 「人格のない社団等」
       法人でない社団・財団で、代表者・管理人の定めがあるもの
       法人でない神社・寺院・布教所・講・信者団体など
       C 仏教会、僧侶団体、宗教連盟、ボランティア団体など
  ⑵ 「法人税」
   ⅰ 「法人税」とは、法人の各事業年度の「所得」に対して課する税金
   ⅱ 「所得」とは、各事業年度の「益金」から「損金」を引いた金額
  ⑶ 法人税の非課税と課税
   ⅰ 法人税の非課税
      公益法人等・人格のない社団等には非課税
   ⅱ 法人税の課税
      収益事業を行う場合には収益事業部分にのみ課税

 2 「収益事業」

  ⑴ 「収益事業」とは
   ⅰ 「収益事業」=「特掲事業」+「継続」+「事業場」
   ⅱ 「特掲事業」とは、販売業・製造業など政令で定める事業
  ⑵ 政令で定める事業
     ① 物品販売業
     ② 不動産販売業
     ③ 金銭貸付業
     ④ 物品貸付業
     ⑤ 不動産貸付業
     ⑥ 製造業
     ⑦ 通信業
     ⑧ 運送業
     ⑨ 倉庫業
     ⑩ 請負業
     ⑪ 印刷業
     ⑫ 出版業
     ⑬ 写真業
     ⑭ 席貸業
     ⑮ 旅館業
     ⑯ 料理店業その他の飲食店業
     ⑰ 周旋業
     ⑱ 代理業
     ⑲ 仲立業
     ⑳ 問屋業
     ㉑ 鉱業
     ㉒ 土石採取業
     ㉓ 浴場業
     ㉔ 理容業
     ㉕ 美容業
     ㉖ 興行業
     ㉗ 遊戯所業
     ㉘ 遊覧所業
     ㉙ 医療保健業
     ㉚ 技芸の教授業、学力の教授業、公開模擬学力試験業
     ㉛ 駐車場業
     ㉜ 信用保証業
     ㉝ 無体財産権の提供等業
     ㉞ 労働者派遣業

 3 宗教法人への課税

  ⑴ ペット供養は収益事業(人間の供養のみが宗教活動)
  ⑵ 読経は請負業(施主から委託されて行うから)
  ⑶ 納骨は倉庫業(遺骨の所有者から寄託されて預かるから)
  ⑷ 清涼飲料水の自動販売機は物品販売業
  ⑸ 「1回10円」の電話機は通信業
  ⑹ 段ボール箱で宗教書・数珠・線香などのセルフ販売は物品販売業
  ⑺ ソーラーパネルは製造業(電力会社に売電する場合)
  ⑻ 法事後の宴席は貸席業
  ⑼ 法要の仕出し弁当は飲食店業
  ⑽ 有料の沐浴道場は浴場業
  ⑾ 檀家の子弟を止宿させるのは旅館業
  ⑿ 檀家の子弟を下宿させるのは不動産貸付業

Ⅱ 地方税法の「境内建物・境内地」

 1 「固定資産税」

  ⑴ 「固定資産税」とは、「固定資産」に賦課される地方税
  ⑵ 「固定資産」=「土地」+「家屋」+「償却資産」

 2 固定資産税の非課税

  ⑴ 境内建物・境内地の非課税
   ⅰ 宗教法人が、専ら、その本来の用に供する
   ⅱ 宗教法人法3条に規定する境内建物・境内地
  ⑵ 「境内建物」とは
   ⅰ 本殿・本堂・会堂・僧堂・社務所・庫裏・教職舎など
   ⅱ 宗教活動に供される、宗教活動の目的のために必要な
   ⅲ 宗教法人に固有の建物
  ⑶ 「境内地」とは
   ⅰ 境内建物の敷地・参道・儀式行事に供用地・庭園・山林・
     歴史古記に縁故ある地・防災用地のような
   ⅱ 宗教活動の目的のために必要な
   ⅲ 宗教法人に固有の土地

 3 境内課税

  ⑴ 非課税のはずの境内建物・境内地に課税
  ⑵ 課税されている境内建物・境内地
   ⅰ 収益事業の用に供している部分
   ⅱ 公益事業の用に供している部分
   ⅲ 宗教活動でも収益事業とされる用に供している部分
   ⅳ 宗教活動でも公益事業とされる用に供している部分
   ⅴ 宗教活動の用に供しているのでない部分
  ⑶ 課税の例
   ⅰ 清涼飲料水の自動販売機の設置部分
   ⅱ 公衆電話の設置部分
   ⅲ 販売用図書の陳列部分
   ⅳ 町内会に使用させている駐車場の部分
   ⅴ 電力会社の電柱の設置部分
   ⅵ 宗教団体子供会の事務所部分
   ⅶ ソーラーパネルの設置部分とソーラーパネル
   ⅷ 防災用品の保管庫
   ⅸ 祭礼備品の保管庫

Ⅲ 所得税法の「見なし給与」

 1 「所得税」

  ⑴ 「所得税」とは
   ⅰ 居住者の「所得」に対して課する国税
   ⅱ 「所得」=「利子所得」+「配当所得」+「不動産所得」+「事業所得」
          +「給与所得」+「退職所得」+「山林所得」+「譲渡所得」
          +「一時所得」+「雑所得」
   ⅲ「給与所得」とは
      俸給、給料、賃金、歳費、賞与などの給与に係る所得
  ⑵ 宗教職の所得
   ⅰ 「給与所得」とされている。
   ⅱ 宗教職は労働者か?
      宗教職は、宗教法人の使用人ではない。
      被包括団体の宗教職は、包括団体によって任命された者。
      宗教職は、神仏に仕え、その意を得て、信者を指導する職務。
      宗教職は、信者の使用される者ではない。
      宗教職は、宗教団体に使用される者でもない。

 2 「みなし給与」

  ⑴ 「みなし給与」とは
   ⅰ 金銭以外の物で受ける経済的な利益で、給与に当たるもの
   ⅱ 所得税法には規定のない用語
  ⑵ 「みなし給与」とみなすことによって
   ⅰ 本人の給与所得が増える
   ⅱ 当然、所得税も増える
   ⅲ 給与所得の源泉徴収額も増える
   ⅳ 法人の徴収額に不足が出る
   ⅴ 当然、税務署への納付額にも不足が出る

 3 宗教職に対する「みなし給与」とされた事例

  ⑴ 支給された法衣・作務衣の代金
  ⑵ 家族で居住している庫裏の賃借料
  ⑶ 家族で益を受けている電気代・電話代・水道代・ガス代
  ⑷ 境内に駐車している住職・家族名義の自家用車の駐車料

[参考文献]

1 論文:
 櫻井圀郎「沐浴道場への固定資産税の賦課」『宗教法』(宗教法学会)
 櫻井圀郎「ペット供養課税処分取消訴訟判決と宗教判断基準」『宗教法』(宗教法学会)
 櫻井圀郎「資産税課税目的による宗教性判断の是非」『宗教法』(宗教法学会)
 櫻井圀郎「宗教活動と税制〜宗教法人課税の当否をめぐって〜」(税務協会提出)
 櫻井圀郎「宗教の判断基準」『キリストと世界』(東京基督教大学)
 櫻井圀郎「宗教活動非課税と税務当局の宗教介入」『基督神学』

2 雑誌記事:
 櫻井圀郎「『ペット供養』課税処分取消訴訟判決〜税務署が『宗教』を判断してよいのか?」『寺門興隆』
 櫻井圀郎「宗教法人税制」『寺門興隆』
 櫻井圀郎「『解釈課税』の違憲性」『京佛』

3 新聞記事:
 櫻井圀郎「宗教法人の原則非課税とは何か?」『キリスト新聞』
 櫻井圀郎「宗教とは何か〜税務署に決定権があるのか」『クリスチャン新聞』
 櫻井圀郎「教会への税務調査、必要な法律の知識」『クリスチャン新聞』
 櫻井圀郎「宗教法人の境内地(教会の敷地)なのに 公衆電話と清涼飲料水の自販機の設置部分には課税?」『クリスチャン新聞』
 櫻井圀郎「慈妙院『ペット供養』最高裁判決の問題点」『仏教タイムス』
 櫻井圀郎「「回向院判決」と宗教法人への固定資産税賦課の問題点」『中外日報』