宗教法人

このページの目次:

Ⅰ 宗教法人の正しい知識・誤っている情報
Ⅱ 宗教法人の設立と変更
Ⅲ 宗教法人の包括・被包括関係
Ⅳ 宗教法人の公益事業・収益事業
Ⅴ 「宗教法人の売買」って?
Ⅵ 宗教法人の税制、非課税の特例
Ⅶ 墓地・納骨堂の建設・経営
Ⅷ 文化財

Ⅰ 宗教法人の正しい知識・誤っている情報

 1 注意が必要な「宗教法人」

⑴ 「宗教法人」に関しては、
多数の誤解があり、誤った情報が流れています。
⑵ 「宗教法人」は、
一般社団法人・一般財団法人、株式会社、学校法人、医療法人、社会福祉法人など
他の法人とは、全く性格が異なります。

 2 「宗教法人」は「宗教活動」を行う法人ではありません。

⑴ 「学校法人」は、
「私立学校の設置」を目的とした法人であり(私立学校法3条)、
私立学校を設置し、私立学校において学校教育を行います。
⑵ 「医療法人」は、
「病院等の開設」を目的とした法人であり(医療法39条1項)、
病院等を開設し、病院等において診療を行います。
⑶ 「社会福祉法人」は、
「社会福祉事業」を目的とした法人であり(社会福祉法22条)、
社会福祉施設を設置し、社会福祉事業を行います。
⑷ 「一般社団法人」「一般財団法人」「株式会社」などは、
「定款で定めた事業」を目的とした法人であり、定款で定めた事業を行います。
⑸ しかし、「宗教法人」は、
「宗教活動」を目的とした法人ではなく、
「宗教活動」を行いません。
「宗教活動」とは、①宗教の教義をひろめ、②儀式行事を行い、③信者を教化育成することをいいます。

 3 「宗教法人」は「世俗の事務」を行う法人です。

⑴ 「宗教活動」を行うのは、
神社・寺院・教会などや教派・宗派・教団など、「宗教団体」です。
⑵ 「宗教法人」は、
「宗教団体」の、
「礼拝の施設」などの財産の所有・維持運用など、
「財務管理」など「世俗の事務」を行うことが目的です。

 4 「宗教法人」の役員は、他の法人の役員とは、まったく性格が異なります。

⑴ 宗教法人の役員は、
3名以上の「責任役員」と、そのうちの1名の「代表役員」です。
⑵ その点は、他の法人と同様です。
学校法人・医療法人・社会福祉法人・一般社団法人・一般財団法人などの「理事」と「代表理事」
株式会社の「取締役」と「代表取締役」
⑶ 「責任役員」は、
宗教法人の事務を決定します(通常、多数決)。
⑷ 「代表役員」は、
宗教法人を代表し、宗教法人の事務を総理します。
⑸ 「宗教法人の事務」とは、
当然、「世俗の事務」であり、
「宗教活動」ではありません。
⑹ その点を明瞭にするために、
宗教法人法には、特別の規定が置かれています。
「代表役員・責任役員」の「宗教法人の事務」に関する権限は、
「宗教上の機能に対するいかなる支配権その他の権限も含まない」とです。

 5 「代表役員」は「宗教主宰者」の下位です。

⑴ 「宗教主宰者」と「宗教職
① 「宗教主宰者」とは、
神社・寺院・教会などの宮司・住職・牧師・司祭・教会長など、
教派・宗派・教団などの総裁・統理・管長・貫主・司教・理事長など、
宗教団体において宗教を主宰する者をいいます。
② 「宗教職」とは、
宗教主宰者以外の神職・僧侶・教師・教職者・聖職者などをいいます。
権宮司・禰宜・権禰宜・副住職・副牧師・伝道師・助祭など、
総長・参事・参与・理事・宗務総長・宗議・庁長などをいいます。
⑵ 「学校法人・医療法人・社会福祉法人であれば、
① 理事長が、学校長と教員・職員を任免・指揮監督します。
② 理事長が、院長と医師・職員を任免・指揮監督します。
③ 理事長が、施設長と職員を任免・指揮監督します。
⑶ 一般社団法人や株式会社が「宗教活動」を行うなら、
代表理事・代表取締役が、宗教主宰者や宗教職を任免し、指揮監督することになります。
⑷ しかし、
① 「宗教法人の代表役員」は、
宗教主宰者や宗教職を任免・指揮監督する権限がありません。
② 「代表役員」は、
宗教法人の最高責任者ですが、
宗教上の権限はないからです。
⑸ 逆に、
① 「代表役員」は、
「宗教主宰者」が任免し、指揮監督します。
② 多くの宗教団体では、
宗教主宰者が任免・指揮監督する下位の宗教主宰者や宗教職を
代表役員に充てています。
⑹ つまり、
「代表役員」は、
責任役員の決定に基づいて、
もっぱら、財務などの世俗の事務を総理するだけの職務です。
⑺ 実際上は、
① 代表役員や責任役員が、
独自に、財務などの世俗の事務を決定し、行うことはできません。
② 宗教団体の方針や決定に基づき、
宗教主宰者や宗教職の命ずる所により、
宗教団体の宗教活動に必要な財務などの世俗の事務を行うのです。
⑻ 例えば、
① 宗教団体・宗教法人の規定では、
宗教団体の最高指導者「総理」の下位に、
総理を補佐する「主管」や財務担当の「財務」が置かれ、
主管や財務をもって「宗教法人の代表役員」に当てるとされています。
② 明らかに、宗教主宰者の下位の立場です。
下位の代表役員が、上位の宗教主宰者を任免・指揮監督することはできません。

 6 「代表役員」には、「信者」の任免権・監督権もありません。

⑴ 代表役員には、
宗教上の権限はありません。
⑵ 当然、代表役員は、
信者を指揮監督する権利も義務もありません。

 7 「宗教活動」による「不法行為」は「宗教法人」の責任ではありません。

⑴ 「宗教活動」による「不法行為」とは、
「宗教活動」の行き過ぎにより、
第三者の権利・利益を侵害し、損害を生じたこと意味します。
⑵ 宗教法人は、
代表役員がその職務を行うにつき第三者に加えた損害を、
賠償する責任を負います。
⑶ 代表役員の職務とは、
「世俗の事務」を意味します。
⑷ 「宗教活動」は、
「代表役員の職務」ではなく、
「宗教法人の事務」でもありませんから、
その損害を宗教法人が負う責任はありません。
⑸ 「代表役員」は、
宗教主宰者・宗教職・信者を使用する者ではありませんし、
宗教主宰者・宗教職・信者への監督権もありませんから、
使用者責任もありません。

 8 宗教活動による不法行為は、宗教団体・宗教主宰者の責任でもありません。

⑴ 「宗教活動」は、
宗教職・信者が各自の信仰に基づいて自主的に行うものです(信教の自由)。
⑵ 「宗教活動」は、
宗教主宰者・上級宗教職・先輩信者などの指揮命令で行うものではありません。
⑶ 「宗教団体」の機関決定に基づくとしても、
「信教の自由」が保障される限り、個人の責任です。
⑷ 「宗教活動」は、
「信教の自由」の保障下では、是であれ非であれ個人の責任です。
⑸ ただし、
「不法行為」そのものを宗教活動とする宗教団体は、論外です。

 9 「信教の自由」のない宗教団体は「宗教団体ではない」。

⑴ 日本国憲法下では、
「信教の自由」の保障が前提とされ、「宗教団体の存立基礎」です。
⑵ したがって、
「信教の自由」を保障しない「宗教団体」は、
「宗教団体」であることの自己否定です。
⑶ 「宗教団体でない団体」と「宗教団体」とを混同してはなりません。

 10 宗教団体・宗教法人・宗教職の方へ

正しい宗教活動を展開し、正しく宗教団体を運営し、正しく宗教法人を運営するために、
「信教の自由」を基本原則として、
宗教専門職による「宗教」に特化した法律事務・法律手続きを旨とする当事務所に!

 11 弁護士・司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士などの先生方へ

「宗教法」は極めて特殊な分野です。
「宗教」関連の事件・事案の処理にあたっては、当事務所にご連絡をください。
先生の事件・事案の処理に、有益・有用な助言をさせていただきます。
先生の事件・事案の処理に、共同受託、一部再受託などの形で協力させていだきます。

 12 参考文献

櫻井圀郎「宗教法人法の構造とその問題点」『キリストと世界』(東京基督教大学)
櫻井圀郎「教団運営の実態と宗教法人法の限界」『キリストと世界』(東京基督教大学)
櫻井圀郎「宗教法人解散後の宗教活動」『キリストと世界』(東京基督教大学)
櫻井圀郎「宗教法人法における宗教団体と宗教法人」『宗教法』(宗教法学会)
櫻井圀郎「宗教団体の実態と宗教法人法の限界」『宗教法』(宗教法学会)
櫻井圀郎「包括宗教団体の法律実務上の諸問題」『宗教法』(宗教法学会)
櫻井圀郎『教会と宗教法人の法律』(キリスト新聞社)
櫻井圀郎「宗教活動による不法行為と宗教法人の責任」『法政論集』(名古屋大学)
櫻井圀郎「宗教活動に基づく不法行為と宗教法人の責任」『私法』(日本私法学会)
櫻井圀郎「宗教法人法制の検証と展開」『21世紀民事法学の挑戦』(信山社)

Ⅱ 宗教法人の設立と変更

  1 宗教団体の設立や変更など

     ⑴ 宗教団体の設立

宗教団体の設立をお考え方は、準備の段階でご連絡ください。
誤りなく、正しい設立をはかります。

     ⑵ 宗教団体の変更

既存の宗教団体の目的の変更、組織の変更、役職の変更、名称の変更など。
決定する前にご連絡ください。その趣旨をご希望に沿って実現します。

  2 宗教法人の設立や変更など

     ⑴ 宗教法人の設立

宗教法人の設立をお考え方は、準備の段階でご連絡ください。
誤りなく、正しい設立をはかります。
「設立の許可が取れない」「許可を得るのに3年以上かかる」など
誤った情報が出回っています。
そもそも、宗教法人の設立は「許可制度」ではありません。
宗教法人制度を誤解した指導がされていることも多々あります。
惑わされずに、当事務所にご連絡ください。

     ⑵ 宗教団体の変更

既存の宗教法人の目的の変更、組織の変更、役職の変更、名称の変更など。
決定する前にご連絡ください。その趣旨をご希望に沿って実現します。

  3 他の法人の設立・変更など

     ⑴ 一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人・公益財団法人

㋑ 宗教活動を社団法人・財団法人として展開する……
㋺ 宗教活動の支援や関連事業を社団法人・財団法人として行う……
㋩ 宗教法人の目的の一部を社団法人・財団法人に付託する……
㋥ 宗教職や信者の団体を社団法人・財団法人とする……

     ⑵ 株式会社・社会福祉法人・医療法人・学校法人の設立

㋑ 宗教活動を株式会社として展開する……
信者が株式を保有することになり、安心して宗教活動に励める
奉納金・布施・献金を株式に転化でき、信者間での争いがなくなる
信者の貢献度が株主総会での表決権に反映され、公平感が現れる
㋺ 株式会社に、宗教活動の支援や関連事業などを任せる……
㋩ 宗教活動の一部を社会福祉法人・医療法人・学校法人に委ねる……

     ⑶ 一般社団法人・株式会社から宗教法人への組織変更

㋑ 一般社団法人・株式会社から宗教法人への組織変更の可否
宗教法人の設立は、他の法人の場合とは、全く異なります。
設立の前提として、「宗教団体」の存在が必要です。
㋺ 宗教活動を主たる目的とする一般社団法人・株式会社……
Ⓐ これらは「宗教団体」に当たるのでしょうか?
Ⓑ 「宗教法人」とは、
「宗教団体」の財産管理など「世俗の事務」のための法人であり、
「宗教活動」を行う法人ではありません。
Ⓒ 法人格を有する一般社団法人・株式会社には、
さらに、重ねて、法人格が付与される必要はありません。
㋩ 「宗教法人」の設立は、
Ⓐ 「宗教団体」から「宗教法人」への「組織変更」ではありません。
Ⓑ 「宗教団体への宗教法人格の付与」です。
㋥ 仮に、
一般社団法人・株式会社に宗教法人格が付与されたとしたら、
二重の法人格を有することになってしまいます。
そんなことは、ありえません。
㋭ 仮に、
一般社団法人・株式会社への宗教法人格の付与が可能だとしたら、
宗教法人の設立に際して、
一般社団法人・株式会社の「解散」が必要になります。
すると、基礎となる「宗教団体」が解散してしまい、
もはや、宗教法人格が付与される余地はなくなります。
㋬ そもそも、
法人の組織変更は、法律の特別の規定がある場合にのみ認められるものです。
㋣ 答えとして、
一般社団法人・株式会社から宗教法人への組織変更は認められません。

Ⅲ 宗教法人の包括・被包括関係

  1 宗教団体・宗教法人の「包括」とは?

     ⑴ 誤解されている「包括」

㋑ 包括宗教団体に包括されると包括宗教団体に「吸収される」のでは?
㋺ 被包括関係になる単位宗教団体は、包括宗教団体の「支部」となるのでは?
㋩ 宗教法人でも同様です。
㋥ このような誤解は、宗教関係者だけでありません。税務官公署に強くあります。営業関係・労働関係の官公署にもあります。

     ⑵ 「包括」の意味

㋑ 民間企業にはない「包括」という制度です。誤解が多いのは、民間企業にない制度だからです。
㋺ 法律上「包括」の規定があるのは、地方自治法と宗教法人法
㋩ 地方自治法
Ⓐ 「都道府県は、市町村を包括する」(5条2項)
Ⓑ 都道府県も、市町村も、独立の法人です(1条の3、2条)
Ⓒ それぞれ、独立の議会・首長・条例によって運営されています。
Ⓓ 条例は法律に、市町村条例は都道府県条例に反しえませんが、その枠内では、自由に規定し、自由に運営されます。
Ⓔ 法律上の規定はありませんが、「国は都道府県を包括する」です。
㋥ 宗教団体の包括(宗教法人法2条)
Ⓐ 宗教団体の包括の例
ⓐ 神 社  神社本庁〜神社庁〜支部〜神社
ⓑ 仏 教  宗派〜教区〜寺院
ⓒ 基督教  教団〜教区〜教会/大会〜中会〜小会
Ⓑ 包括関係を取らない単一の宗教団体の例
ⓐ 本部〜支部〜教会
ⓑ 株式会社の本社〜支社〜営業所と同様です。
ⓒ 包括関係を取るか取らないかは、各宗教団体の方針により、自由に決定できます。
ⓓ 包括関係を足らなかった宗教団体でも、下位組織を独立の宗教団体として(宗教団体の分割)、上位組織を包括宗教団体とすることも可能です。
ⓔ 包括関係をとっていた宗教団体でも、被包括宗教団体を包括宗教団体に集合して(宗教団体の合併)、単一の宗教団体とすることも可能です。
Ⓒ 宗教団体の包括・被包括関係は、「国〜都道府県〜市町村」と同様です。

     ⑶ 「包括関係」と「社団組織」

㋑ 「社団組織」
Ⓐ 業者団体・民間組織の例
全国連合会〜都道府県団体〜各企業・各団体
Ⓑ 下位団体を社員とした社団組織
Ⓒ 「国〜都道府県〜市町村」とは異なる
㋺ 「包括関係」
Ⓐ 社団形態をとる宗教団体もあります。
Ⓑ 社団形態をとる必要はありません。
Ⓒ 下位団体から議員を出しても出さなくても構いません。

  2 宗教団体の包括・被包括関係

     ⑴ 単純包括

㋑ 一の包括宗教団体と複数の被包括宗教団体からなる組織
㋺ 例えば、複数の神社・寺院・教会などをまとめる、一の教派・宗派・教団・教会など
㋩ 比較的小規模な宗教団体に向いています。

     ⑵ 複層包括

㋑ 一の高位包括宗教団体の下に、複数の中位包括宗教団体を擁し、それぞれに複数の被包括単位宗教団体を有する組織です。
㋺ 「教宗派〜教区〜単位団体」という複層の組織です。
㋩ 3段に留まらず、必要に応じて、さらに多層になることも可能です。「総本部〜地方本部〜都道府県連合〜地区連合〜支部〜単位団体」などです。
㋥ 国際的な宗教団体では、国内の組織の上に、国際組織を有することも可能です。例えば、「世界総本部〜アジア総本部〜日本総本部〜……」などです。

     ⑶ 複合包括

㋑ 宗教団体の教義・教理・理念などのよっては、さらに、複雑な組織をとることも可能です。
㋺ 例えば、Ⓐ 統合総本部の下に、①聖務、②教務、③宗務、④信徒、⑤財務の各「統合本部」を持ち、Ⓑ 聖務統合本部は、単位団体が直接、包括されるが、Ⓒ 教務・宗務統合本部の下には、、広い地域の中間包括団体を有し、Ⓓ 財務統合本部には、、狭い地域に細分化された複層の包括団体を有するなどです。
㋩ 単位宗教団体が、Ⓐ 中間包括宗教団体に包括されると共に、Ⓑ 上位包括宗教団体にも直接包括される、との形態も可能です。

  3 宗教法人の包括・被包括関係

    ⑴ 法律の規定による包括

㋑ 宗教法人法上(2条)、「単純包括」のみと考えられています。
㋺ 宗教法人の単純包括
Ⓐ 包括宗教法人  単位宗教法人を包括するのみの宗教法人
Ⓑ 単位宗教法人  礼拝の施設を有する単位となる宗教法人
㋩ 法律上の単純包括
「包括宗教法人〜単位宗教法人」という組織のみ

    ⑵ 法律上認められない包括関係

㋑ 単純包括以外は、法律上許されないと解されています。
㋺ 法律上許されない包括関係の例
Ⓐ 包括宗教法人の包括宗教法人
Ⓑ 単位宗教法人を包括する単位宗教法人
㋩ したがって、Ⓐ 「教区」「都道府県神社庁」など、中間の包括宗教人は認められません。
Ⓑ やむをえないので、包括宗教法人を「単位宗教法人」として上位包括宗教法人に包括されるとしています。
Ⓒ 単位宗教法人の傘下で活動を始めた宗教団体の指揮・把握が困難です。包括関係は、上位の包括宗教団体と直接になります。
Ⓓ 神社の場合
ⓐ 実態関係  神宮〜神社本庁〜神社庁〜支部〜神社
ⓑ 法律関係  神社本庁〜神宮・神社庁・神社
ⓒ 神宮も末端の神社も同格で、直接神社本庁に被包括
ⓓ 包括団体である神社庁も、単位団体として、神社本庁に被包括
Ⓔ 仏教・基督教・諸宗教の場合
ⓐ 寺院は、教区を飛ばして、直接、宗派に被包括となる形
ⓑ 教会は、教区を飛ばして、直接、教団に被包括となる形
ⓒ 小会が、中会を飛ばして、直接、大会に被包括となる形

  4 宗教法人の被包括関係・包括関係の設定・廃止

    ⑴ 宗教法人の被包括関係の設定

㋑ 包括宗教法人との事前の教義に基づき、各個の宗教法人で決議し、包括宗教法人の承認を得ます。
㋺ 宗教法人の規則の変更手続きをし、所轄庁による規則変更の認証を受けます。
㋩ 法務局に宗教法人の変更登記をし、所轄庁に届け出ます。
㋥ その余の事項は、包括宗教法人の諸規則や包括宗教法人との協定などに基づきます。

    ⑵ 宗教法人の被包括関係の廃止

㋑ 各個の宗教法人で決議し、包括宗教法人に通知します。
㋺ 宗教法人の規則の変更手続きをし、所轄庁による規則変更の認証を受けます。
㋩ 法務局に宗教法人の変更登記をし、所轄庁に届け出ます。
㋥ 包括宗教法人の諸規則や包括宗教法人との協定などに影響されません。

    ⑶ 宗教法人の包括関係の設定

㋑ 包括宗教法人で決議し、被包括宗教法人に通知します。
㋺ 被包括宗教法人に対して、規則変更の手続きを履践させ、所轄庁による規則変更の認証を受けさせます。
㋩ 法務局に変更登記を申請させ、登記後の登記事項証明書の提出を求めます。
㋥ 所轄庁に登記完了届を提出させます。
㋭ その余の事項は、包括宗教法人の規則や被包括宗教法人との協定などに基づきます。

    ⑷ 宗教法人の包括関係の廃止

㋑ 包括宗教法人で決議し、被包括宗教法人に通知します。
㋺ 被包括宗教法人に対して、規則変更の手続きを履践させ、所轄庁による規則変更の認証を受けさせます。
㋩ 法務局に変更登記を申請させ、登記後の登記事項証明書の提出を求めます。
㋥ 所轄庁に登記完了届を提出させます。

  5 宗教法人の包括・被包括関係の設定・廃止と宗教団体の関係

㋑ 宗教法人に包括・被包括関係が設定・廃止されても、それだけの理由で、直ちに、宗教団体の地位に変更が生じることはありません。
㋺ ただし、包括・被包括関係の設定には、宗教団体の包括・被包括関係の設定が前提であるのが通例です。
㋩ とはいえ、宗教法人の包括・被包括関係と宗教団体の包括・被包括関係とは聖俗別次元の問題であり、両者を異にする事もありえます。
㋥ 包括・被包括関係にある宗教団体が、宗教法人としては包括・被包括関係を設定しないことも可能です。
㋭ 包括・被包括関係にない宗教団体が、宗教法人としては包括・被包括関係を設定することも可能です。
㋬ 宗教法人の包括・被包括関係を廃止しても、直ちに、宗教団体の包括・被包括関係が廃止されるわけではありません。
㋣ 宗教団体の包括・被包括関係を廃止しても、直ちに、宗教法人の包括・被包括関係が廃止されるわけではありません。

  6 宗教法人の包括・被包括関係の設定・廃止と宗教職・信者の地位

宗教法人に包括・被包括関係が設定・廃止されても、それだけの理由で、直ちに、宗教職や信者の地位に変更が生じることはありません。

Ⅳ 宗教法人の公益事業・収益事業

1  宗教法人の公益事業

宗教法人法には「宗教法人は公益事業を行うことができる」と定められていますが、それは、宗教法人の法的能力に関する規定であり、すべての宗教法人が「公益事業を始める」ことができるわけではありません。宗教法人が、新たに公益事業を始めるには、所定の手続きにより、宗教法人の規則を変更して、所轄庁(都道府県知事または文部科学大臣)の認証を受けることが必要です。

実際に行なっている(あるいは行おうとしている)事業が、「宗教活動」なのか、「公益事業」なのか、「収益事業」なのかは、十分な検討が必要です。一概に、「対価を得たら収益事業」とは言えませんし、「公益事業は無償に限る」わけでもありません。そもそも「宗教活動」は「公益事業」です。ただし、「宗教活動」は「宗教法人の事業」ではありません。

宗教法人が「公益事業を始める」には慎重でなければなりません。地方税法上、宗教法人の所有する境内建物・境内地には固定資産税が課されないこととされていますが、課税庁では、境内建物・境内地を、収益事業はもちろん、公益事業の用に供すると、「非課税でなくなる(課税される)」と解されているからです。

例えば、「防災用品」の保管や「災害時の非常糧水」の備蓄のために、境内建物を供すると、それが「専ら信者のためなら非課税」であるが、「地域住民や被災者・帰宅困難者のためなら寡勢」となると解されています。一般営利企業であれば、現免税の対象となるのに、公益法人である宗教法人だと課税となるというのです。

その他、地域住民の福祉のため施設を利用させても、地域老人会・子供会・町内会のために便宜を供しても、その他の社会貢献のために施設を無償で提供しても、「公益事業として課税」となるというわけです。安直に「公益事業」を勧める向きもありますが、慎重な検討が必要でしょう。

2  宗教法人の収益事業

宗教法人は「目的に反しない限度で、公益事業以外の事業(収益事業)を行うことができる」というのが宗教法人法の規定です。もちろん、宗教法人が直ちに何らかの収益事業を開始できるわけではありません。宗教法人が新たに収益事業を行おうとする場合には、所定の手続きにより、宗教法人の規則を変更して、所轄庁の認証を受けなければなりません。

誤解されている方も多いのですが、「宗教法人の収益事業」は、「株式会社などの営利事業」とは異なります。「株式会社などの営利事業」は、利益をあげ、利益を配当することが目的ですが、「宗教法人の収益事業」は「宗教法人の財政を補助するため」であり、「宗教活動を進めるため」の財源です。

「対価性があれば収益事業」「有料の事業を行えば収益事業」などと言われていますが、そうではありません。宗教活動でも有料のものもありますし、公益事業にも有償のものもあります。あくまでも、宗教法人の財政を補助するために行う事業が宗教法人の収益事業です。

「宗教法人法上の収益事業」と「法人税法上の収益事業」とは別の概念です。両者を混同すると謝りが生じます。宗教法人法上「収益事業」であっても、法人税法上「収益事業ではない」という事例は多々ありますし、法人税法上「収益事業である」とされても、宗教法人法上は「収益事業ではない」ということもあります。

近年は「宗教活動」として行われているものを、法人税法上「収益事業である」として法人税の納税義務があるとされたり、固定資産税が賦課されたりという事例が多発しています。また、「収益事業」と思って行なっていたものでも、実は「公益事業」や「宗教活動」であったこともしばしばあります。

おかしな事例:
信者や参詣者のために、サービスとして、清涼飲料水自動販売機を設置すると、「物品販売業」
信者や参拝者のために、宗教書や経典を、セルフ販売にしていると、「物品販売業」
電話機の横に「1回10円」と書いた空き缶を置いていると、「通信業」
ソーラー発電パネルを設置すると、「発電業」
ペットの焼骨の収蔵(納骨)は、「倉庫業」
ペット葬儀の読経は、「請負業」
結婚式・葬式・法要の後の会席などは、「席貸業」「飲食店業」

Ⅴ 「宗教法人の売買」って !?

  1 「宗教法人の売買」という問題

巷では、
「宗教法人の売買」が取り沙汰され、
宗教法人悪者論」の根拠の一つとなっています。
インターネット上では、
数百万円〜数千万円で「宗教法人の売買」が紹介されています。

  2 「株式会社の売買」と「宗教法人の売買」

     ⑴ 株式会社の売買

㋑ 株式会社は営利法人であり、
株主への営利の配当が目的です。
㋺ 株式会社は、
営利を目的とする法人ですから、
その価値も金銭的に測ることが可能です。
㋩ 株式会社の株式は、
そもそも売買の対象であり、
株式売買を通じて会社売買が可能です。
㋥ 平常の経済活動において、
「企業買収」は通常のことであり、
事業展開の一つの方策です。
㋭ 既に構築された
企業組織、企業資産、人事構成、営業実績など
を活用することによって、
新しい分野に参入し、
営業活動を拡大し、
収益を拡大させるメリットがあります。

     ⑵ 宗教法人の売買

㋑ 「宗教法人」は
特定の宗教団体」のための財務管理など
を担当する法人です。
Ⓐ その意味で、
宗教法人自体を売買するメリットはないはずです。
Ⓑ 既存の宗教法人を買収しても、
それを活用する道はないからです。
Ⓒ あるとすれば、
「法律の枠を超えた目的」
法律外の目的」でしょう。
Ⓓ 法律外のことなので、
法律上の問題ではありません。
㋺ 「宗教法人」は
経済的価値を伴うものではなく、
買収の対象とはなりません。。
Ⓐ 株式会社なら、
株式の売買によって、
「会社を売買」することも可能ですが、
Ⓑ 宗教法人は、
そういう性質のものではありませんから、
「法人の売買」は不可能です。
Ⓒ 「物の売買」は、
「物の所有者」から、
「物」を譲受することですが、
Ⓓ 「宗教法人の所有者」は
存在しませんから、
宗教法人の売買は不可能です。
Ⓔ 「株式会社」なら
「総株主」が所有者とも言えます。
Ⓕ 「全株式」を取得すれば、
会社を自己の支配下におくことは可能です。。
㋩ 「宗教法人」の場合、
Ⓐ 「宗教法人を売る
ことができる者はいません。
Ⓑ もし、
「宗教法人を売った」としたら、問題です。
Ⓒ 「代表役員が売った」としたら、
代表役員が権限を踰越
代表役員が不当な金銭を受領
Ⓓ ありえないことです。

  3 「宗教法人の売買」とは……

     ⑴ 「宗教法人を買って」どうするのか?

       ① 行政の認証拒絶に対する対策

㋑ 正規に宗教法人にしたいが
行政が拒絶しているので、
やむなく「宗教法人の売買」を利用する……
㋺ それは誤解です。
㋩ 正当に宗教活動を行ってきた宗教団体であれば、
正規に宗教法人を設立することが可能です。
㋥ 巷で言われているように
「行政が新規の規則認証を拒絶している」
「行政が新規の宗教法人を禁止している」
ことはありません。

◉  もし、そんな事実があるなら、
是非、ご連絡ください。
断固、糾弾いたします。

       ② 新たな宗教活動を開始

㋑ 自ら教祖になって、新たに宗教活動を行いたい……
㋺ それは誤解です。
㋩ 「宗教法人」は
「宗教活動を行う法人」ではありません。
㋥ 「宗教活動」は
自ら「宗教団体」を設立して、
開始することができます。
㋭ 「信教の自由」の観点から、
「宗教活動」「宗教団体」に、
法律や行政が関与することはありません。

       ③ 墓地の経営を始める

㋑ 「墓地」を作りたい。「墓地の経営」を始めたい……
㋺ それは誤解です。
㋩ 多くの市区条例で
「宗教法人に限る」旨が定められていますが、
㋥ そもそも、
宗教法人は「墓地の経営を行う」法人ではありません。

       ④ 相続税対策として……

㋑ まさに「脱税目的」です。
㋺ 正しい知識なく、
「宗教法人は無税」と思ってのことでしょうが、
思い通りになるとは思えません。
㋩ 不動産取得税や固定資産税が非課税となるのは
「境内建物」「境内地」に限ります。
㋥ 今までの実績もなく、
「宗教法人を買ったから」といって、
それが通用するとは思えません。
㋭ 数百万円も数千万円もかけて
「元が取れる」とも思えません。

       ⑤ 非課税の特権を享受したいから……

㋑ 多くは、
誤解に基づいているように思います。
㋺ 現実には、
歴史があり、
活動実績もある「正当な宗教法人」ですら、
課税問題が多くあります。
㋩ ましてや、
単に「買っただけ」の形式上の宗教法人で、
簡単に非課税になるとも思えません。

     ⑵ どうやって「宗教法人の売買」を行うのか?

       ① 責任役員・代表役員の変更

㋑ 従来の役員を総入れ替えして、
事実上、法人の売買を達成することです。
㋺ しかし、
多くの宗教法人では、
役員の任免権を宗教団体が有しているので、
当該法人だけではできません。
㋩ 被包括関係にある宗教法人の場合、
包括団体の任免にかかっていることが多く、
単独ではできません。

       ② 被包括関係の廃止

㋑ 被包括関係の宗教法人の場合、
包括団体との関係を絶たない限り、
法人売買はほぼ不可能です。
㋺ そのため、
まず、
被包括関係の廃止の手続きを踏むことになります。
㋩ 被包括関係の廃止の手続きには、
責任役員会議の決定、
信者などの承認などが必要になります。
㋥ 信者や利害関係人に公告する必要があります。
㋭ 包括団体への通知が必要です。
㋬ 所轄庁(都道府県知事・文部科学大臣)の認証が必要です。

       ③ 目的の変更

㋑ 現在の目的とは異なるはずですから、
目的の変更を行うことになります。
㋺ 法律上は、
目的の変更は自由ですが、
宗教の実態を踏まえれば、
自由な変更は不自然です。
㋩ 仏教から基督教への変更など、
明らかに不自然です。
㋥ 営利法人の場合、
目的の変更は全く自由ですが、
宗教法人の場合は異なります。
㋭ 目的の変更は、
所轄庁(都道府県知事・文部科学大臣)の認証が必要です。

       ④ 名称・主たる事務所の変更

㋑ 他の法人と同様、
宗教法人の名称や主たる事務所の変更も可能です。
㋺ 営利法人であれば、
全く自由に変更可能ですが、
宗教法人は異なります。
㋩ 不自然な名称変更や主たる事務所の変更には
慎重な審査がなされるでしょう。
㋥ 所轄庁を異にする主たる事務所の変更は
慎重に審査されるでしょう。
㋭ 名称・主たる事務所の変更は、
所轄庁(都道府県知事・文部科学大臣)の認証が必要です。

     ⑶ 「買った宗教法人」の行方

       ① 宗教法人の消滅

㋑ 「宗教法人」は
「宗教団体の財務管理などを行う法人」ですから、
㋺ 母体となる「宗教団体」が消滅すれば、
「宗教法人」も消滅するほかありません。
㋩ 残っているのは
登記簿上・書類上の存在にすぎません。

       ② 宗教法人の特殊性

他の法人制度からは考えられないことですが、
それが「宗教法人の特殊性」です。

       ③ 「買った宗教法人」

㋑ 「買った宗教法人」とは、
「宗教団体」の実態のない「宗教法人」と考えられますから、
㋺ 「宗教法人」としての存在の根拠がありません。
㋩ したがって、
「買った宗教法人」は、
どういう目的であれ、
目的を達成することはできないでしょう。

Ⅵ 宗教法人の税制、非課税の特例

1 法人税

宗教法人は非課税のはずだが……。
法人税法による「収益事業」の政令委任の妥当性は……。
税務署による「収益事業」判断の是非は……。
こんなことまで「収益事業」。

2 所得税

宗教職の謝儀・報酬は「給与」でいいのか……。
理不尽な宗教職の「みなし給与」……。

3 固定資産税

境内地・境内建物は非課税のはずだが……。
ソーラパネルは償却資産として課税……。
公益公共のために施設を提供すると課税される……。

4 参考文献

櫻井圀郎「沐浴道場への固定資産税の賦課」『宗教法』(宗教法学会)
櫻井圀郎「ペット供養課税処分取消訴訟判決と宗教判断基準」『宗教法』(宗教法学会)
櫻井圀郎「沐浴道場への固定資産税の賦課」『宗教法』(宗教法学会)
櫻井圀郎「資産税課税目的による宗教性判断の是非」『宗教法』(宗教法学会)
櫻井圀郎「宗教と税制〜宗教法人課税の当否をめぐって〜」
櫻井圀郎「宗教の判断基準〜行政と「宗教」の問題〜」『キリストと世界』(東京基督教大学)
櫻井圀郎「宗教活動非課税と税務当局の宗教介入」『基督神学』(東京基督神学校)
櫻井圀郎「『ペット供養』課税処分取消訴訟判決〜税務署が「宗教」を判断してよいのか?〜」『寺門興隆』(興山社)
櫻井圀郎「宗教法人はなぜ税制上の特例を受けているのか?」『寺門興隆』(興山社)
櫻井圀郎「『解釈課税』の違憲性」『京佛』(京都仏教会)
櫻井圀郎「宗教法人の公益性と地方税」『宗教と公益』(東京都宗教連盟)
櫻井圀郎「ペット供養は収益事業か」『Q&A宗教法人をめぐる法律実務』(新日本法規)
櫻井圀郎「想定外の宗教課税〜「課税リスク」と宗教法人のリスクマネジメント〜」『危機と管理』(日本リスクマネジメント学会)

Ⅶ 墓地・納骨堂の建設・経営

1 「墓地」とは

「墓地」とは、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)上、「墳墓」を設置するための土地の区域をいいます。
一般に言われている「墓地」とは「墓地の区画」のことを指しています。法律上の用語との間に齟齬があるので、注意が必要です。ロッカー式納骨堂型の「立体墓地」と称されるものもありますが、「墓地」とは「墳墓を設置するための土地の区域」をいうので、建造物を墓地というのには無理がありそうです。
「墓地の区画」は、通常、「永代使用」が前提とされた「使用権」が設定されています。一般に「墓地の販売」といわれているのは、「墓地(区画)の所有権」ではなく、「墓地(区画)の使用権(永代使用権)」が対象です。

2 「墳墓」とは

「墳墓」とは、墓埋法上、「死体の埋葬」や「焼骨の埋蔵」をする施設のことをいいます。いわゆる「お墓」です。
墓埋法によって、「墳墓」は、「墓地」でない場所に設置することはできないものとされています。したがって、自宅の庭や自己所有の田畑・山林などに墳墓を設置することはできません。古来のものは存在しますが、現在ではできません。
通常、永代使用権の設定された「墓地(区画)」に自己の「墳墓」を所有することになります。借地上の建築された自己所有の建物のような関係です。

3 「納骨堂」とは

「納骨堂」とは、墓埋法上、「他人の委託」を受けて「焼骨の収蔵」をする施設のことをいいます。老人福祉施設の歓談室に入居者だった人の焼骨を安置することも「納骨堂に当たる」とされていますが、自宅の居間に家族の焼骨を安置することは納骨堂に当たりません。「他人の委託」の有無が決め手です。
元々、墳墓が完成して、墳墓に埋蔵するまでの間、焼骨を一時的に保管しておく施設でしたが、今日では永代収蔵施設となっています。そのため、納骨区画の販売(使用権の設定)も通常の形として行われており、「墓地(区画)の販売(使用権の設定)」と同一・同様・類似の形態となっています。その場合、「自己の使用管理する施設への自己の焼骨の収納」であって、「他人の委託を受けた焼骨の収蔵」にあたるのか疑義があります。
通常、ロッカー型(立体)ですが、平面式の納骨堂も理論上は可能です。「納骨堂」といい「堂宇」を想定していますが、「他人の委託を受けて焼骨を収蔵する施設」であれば「墓地上の平面の納骨堂」もありえるでしょう。

4 墓地・納骨堂の経営とは

「墓地・納骨堂の経営」とは、実態上、一定の収益のある有料の施設を経営することをいいます。
宗教団体(宗教法人)が所有する信者向けの無料の施設は適用外と考えられます。
墓埋法の改正で、都道府県知事の権限の一部が市区長に移されたことから、墓埋法の趣旨要件を超えた、市区条例による規制が全国的に問題となっています。

5 墓地・納骨堂・焼骨の収蔵施設

公益事業や収益事業としてではない、氏子・檀信徒・信者・教会員のための「焼骨の収蔵施設」も、一概に、「経営墓地・納骨堂」の扱いを受けていますが、適正適切な対応が求められます。「墓地でない墓地」「納骨堂でない納骨堂」「納骨堂様の墓地」「墓地様の納骨堂」など多様な構築も可能でしょう。

6 参考文献

櫻井圀郎「葬送法上の諸問題」『キリストと世界』(東京基督教大学)
櫻井圀郎「墓地・埋葬をめぐる法律問題」『自分らしい葬儀』(いのちのことば社)

Ⅷ 文化財

1 「文化財」とは

「文化財」とは、文化財保護法上、次の⑴〜⑹の総称をいいます。

⑴ 「有形文化財

① 歴史上・芸術上価値の高い有形の文化的所産(建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書など)と、
② 考古資料・学術上価値の高い歴史資料。

⑵ 「無形文化財」

無形の文化的所産(演劇、音楽、工芸技術など)。

⑶ 「民俗文化財」

① 風俗習慣・民俗芸能・民族技術(衣食住、生業、信仰、年中行事に関するもの)と、
② それらに用いられる物件(衣服、器具、家屋など)。

⑷ 「記念物」

遺跡(貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅など)。

⑸ 「文化的景観」

景観地(地域の人々の生活、生業、風土により形成されたもの)。

⑹ 「伝統的建造物群」

伝統的建造物群(周囲環境と一体化して歴史的風致を形成しているもの)。

2 重要文化財・国宝・登録有形文化財

「重要文化財」「国法」「登録有形文化財」とは、文化財保護法上、次のものをいいます。

⑴ 「重要文化財」

① 「有形文化財」のうち、
② 「重要なもの」として、
③ 文部科学大臣が指定したもの。

⑵ 「国宝」

① 「重要文化財」のうち、
② 世界文化の見地から「価値が高い」もので、
③ 「類ない国民の宝」として、
④ 文部科学大臣が指定したもの。

⑶ 「登録有形文化財」

① 「有形文化財」のうち、
② 「重要文化財」ではないが、
③ 「文化財としての価値」に鑑み、
④ 「保存・活用」のための措置が必要なものとして、
⑤ 文部科学大臣が指定したもの。

3 重要文化財に指定されると……

宗教法人が所有する神像・仏像・堂宇・伽藍・経典・聖具などが、
文化財保護法によって「重要文化財(国宝を含む)」に指定された場合、
宗教法人は、次の制限・義務を負うことになります。

⑴ 自費管理

宗教法人は、
法令の規定と文化庁長官の指示に従って、
自費で、重要文化財の管理や修理をしなければなりません。

⑵ 補助金の助成

重要文化財の管理や修理に「費用が多額」に及び、
宗教法人の負担にたえない場合には、
その一部を政府の「補助金」として交付されることがあります。

⑶ 文化庁長官の関与

重要文化財については、
文化財保護法によって文化庁長官が次のような権限を有します。
宗教法人は、
その限度で、
自己の所有する当該施設物品に関して、
使用などで制限を受け、義務を負うことになります。

ⅰ   管理や修理の補助金を交付する条件としての指示
ⅱ   補助金を受けた管理や修理の指揮監督
ⅲ   不適切な管理に対する措置命令・勧告
ⅳ   国宝の毀損に対する措置命令・勧告
ⅴ   毀損された国宝の修理
ⅵ   重要文化財の現状を変更する許可
ⅶ   重要文化財の修理の届出の受理
ⅷ   輸出の特別許可
ⅸ   公開の勧告・命令
ⅹ   国立博物館などにおける公開への出品の勧告・命令
ⅺ   展覧会などに供覧の許可
ⅻ   現状・管理・修理・環境保全状況の報告要求
xiii   現場への立入り・実地調査

⑷ 権利の制限

宗教法人は、
自己の所有する施設物品であっても、
文化財保護法によって、
自由に処分などをすることができず、
次のような一定の制限を受けることになります。

ⅰ 輸出の禁止(文化の国際交流などは例外)
ⅱ   有償譲渡の制限(文化庁長官の買取り優先)
ⅲ   公開の義務

4 「登録有形文化財」に登録されると……

⑴ 所有者は、
法令の規定に従って、自費で管理や修理をしなければなりません。

⑵ 所有者は、
滅失・毀損・亡失・盗難があったときは、
10日以内に、文化庁長官に届出なければなりません。

⑶ 所有者は、
所在場所を変更しようとするときは、
20日前までに、文化庁長官に届出なければなりません。

⑷ 所有者は、
現状を変更しようとするときは、
30日前までに、文化庁長官に届出なければなりません。

⑸ 所有者は、
輸出しようとするときは、
30日前までに、文化庁長官に届出なければなりません。

⑹ 所有者は、
登録有形文化財の公開を行うものとされていますが、
所有者の同意を得て、第三者が公開することもできます。

5 「重要文化財」「国法」「登録有形文化財」の問題点

⑴ 文化か? 宗教か?

⑵ 公開か? 秘儀か?

⑶ 文化財の鑑賞か? 宗教的信仰か?

⑷ 神仏の聖域か? 人間の俗世か?

⑸ 宗教活動か? 公営事業・収益事業か?

⑹ 非課税か? 課税か?

教会