(ヴァチカン内庭よりサンピエトロ大聖堂)
目 次
Ⅰ 宗教と法
1 神と法
2 善と悪
3 神学と法学
4 神学と自然科学
5 『キリスト教法理学序説』
6 『Law and Charisma in the Reformed Ecclesiology』
Ⅱ 宗教の法
1 基督教(キリスト教)
2 仏教
3 神道
4 イスラーム
5 諸宗教
Ⅲ 「信教の自由」
1 「信教の自由」とは
2 個人の「信教の自由」
3 信者の「信教の自由」
4 宗教職・宗教専門職の「信教の自由」
5 宗教団体の「信教の自由」
Ⅳ 「聖俗の分離」
1 宗教と国家
2 宗教法人と会社・法人
Ⅴ 宗教非課税の原則
1 宗教の聖性
2 宗教の非営利性
3 宗教の公益性
4 信教の自由の保障
5 法人の税
6 個人の税
Ⅵ 宗教と国家
Ⅶ 宗教と社会
1 ダイバシティ
2 SDGs
3 LGBT
Ⅷ 宗教と倫理
Ⅸ 「宗教と法」に関連する著書・論文
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・
トピックス
〇 新型コロナウイルス感染症「緊急事態宣言」と「信教の自由」
・
(神の名「ヤハウェ」。ユダヤ教会堂備付けの「トーラー(法の書)」)
Ⅰ 宗教と法
1 神と法
⑴ 古代エジプト
① 法の制定
古代のエジプトでは、神オシリスが、人々に文明をもたらし、法を定め、神信仰を勧奨しています。
② 法の授与
BC3400年頃、南北統一王朝のメネス王に、神ヘルメスが、法を授与しています。
⑵ 古代バビロン
① シャマシュ
㋑ 古代のバビロンでは、「太陽神シャマシュ」が、ハンムラビ王に法を授与しています。
㋺ アッカド語「シャマシュ」は「太陽」。
Ⓐ シュメール語で「太陽」は「ウド(ウト、ウトゥ)」。
Ⓑ アラビア語では「シャムス」、ヘブライ語では「シェメシュ」。
㋩ 根源としての「太陽」、規範としての「太陽」。
㋥ 法を授与する「正義の神」。
② 「ハンムラビ法典」
㋑ 「楔形文字法」(アッカド語)として発布
㋺ 「シャマシュがハンムラビに法を授与する」彫刻を施した石柱に刻字して公布。
㋩ 「タリオの法(同害報復法)」
Ⓐ いわゆる「目には目を」
Ⓑ 旧約聖書の「目には目を」とは別
⑶ 古代ギリシャ
① 古代ギリシャでは、最高神ゼウスが、法を付与している。
② ギリシャ語で「法」を意味する語には、「テミス」「ディケ」「ノモス」の三つがあります。
③ 「テミス」は、神の叡智を表し、「法なるが故に正義なり」とするものです。
④ 「ディケ」は、暴力に対抗し、「正義なるものが法なり」とするものです。
⑤ 「ノモス」は、神が人間に課した規則のことです。
⑷ 古代ローマ
① 古代ローマでは、「法」は「正義の実現」を目的とする「神の意思」と理解される。
② 「法の解釈」を誤ると「神の意思」を損なうので、「法の解釈」は「神官の仕事」とされました。
③ ギリシャでは、「文字通り」に法を適用する形式主義でしたが、
ローマでは、法の解釈による神の真意を求め、正義の実現を求める実質主義に移行しました。
⑸ 中南米の文明
① インカ帝国では、神々の中の神ピラコチャが、人々に知識・技術を与え、法を付与しています。
② アステカ文明では、神ケツアルコアートルが、法を制定しています。
③ マヤ文明では、神ククルカンが、法を制定しています。
⑹ 猶太教(ユダヤ教)・基督教(キリスト教)・イスラーム(イスラム教)
① 猶太教(ユダヤ教)・基督教(キリスト教)・イスラーム(イスラム教)は、共通して、その原点を『聖書(旧約聖書・タナハ)』に置いています。
② 「聖書(タナハ)」は、㋟律法(トーラー)、㋤預言書(ナビーム)、㋩諸書(ケスビーム)からなります。
③ 「律法」は、ヘブライ語で「トーラー」といいます。「法」という意味です。
④ 「律法(トーラー)」は、「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」の5書からなっています。
⑤ 「預言書(ナビーム)」は、預言者による神の言葉ですが、「律法の解釈」という側面をもっています。
⑥ 猶太教の「タルムード」は、律法学者による「律法の解釈」という側面をもっています。
⑦ 基督教の「新約聖書」は、イエスと弟子たちによる「律法の解釈」という側面をもっています。
⑧ イスラームの「クルアーン(コーラン)」は、ムハンマド(マホメット)による「律法の解釈」という側面をもっています。
⑺ 比較文明論
・
2 善と悪
⑴ 東西の法意識
① 東洋の法意識
㋑ 中国を中心とする東洋の世界においては、「法は統治の手段」であると意識されています。
㋺ 「法」は、皇帝(統治者)が、民を強いて動かし、統治するための手段・道具であると考えられています。
㋩ 基本的に、法は統治者の意思であり、主観的な法ということになります。
㋥ ただし、皇帝も、人間の意思によるのではなく、天の命(天命)により任じられた者であると考えられています。
㋭ したがって、皇帝が天命を全うすることができず、統治能力に欠ける場合は、排斥されることになります。
それは、天の命が革った(変わった)からであると考えられます。「革命」です。
② 西欧の法意識
㋑ ローマを基点とする西欧の世界では、「法は権利(権利義務)の体系」であると考えられています。
㋺ 「法」は、神の意思であり、神から与えられた規範であると考えられています。
㋩ 基本的に、法は正義の基準であり、客観的な法であるという意識です。
㋥ 法は神の意思であるという観点から、古代ローマでは、神官が法の解釈を行うことになります。
神の意思を適正に理解して、法を適用するためです。
③ 東西の法治主義
㋑ 中国の法思想
Ⓐ 中国で「法治主義」とは「法家の思想」のことを言います。
Ⓑ 「法家」とは、諸子百家の一つで、「韓非子」「商君書」「管子」などがあります。
Ⓒ 「法家」は、「厳格な法による統治」「法による厳格な統治」を主張します。
Ⓓ 郡県制による中央集権の国家統治体制を築きます。
Ⓔ 「徳治主義」を説く孔子を祖とする「儒家」を批判・対抗し、国家統治に尽力します。
㋺ 西欧の法思想
Ⓐ 西欧の「法治主義」は、ドイツ法学に由来します。
Ⓑ 基本的に恒久的な法体系によって統治される国家、法によって権力が拘束される国家をいいます。
Ⓒ なお、英米法の「法の支配」とは、国家の権力を法で拘束し、専断的な国家権力を規制するものです。
㋩ 東西の法治主義
Ⓐ 中国の法治主義:
ⓐ 国家権力が、法を用いて、人民を厳格に統治する。
ⓑ 国家権力(皇帝)は、「法の上」。
Ⓑ 西欧の法治主義:
ⓐ 法によって、国家権力を拘束し、専断を規制する。
ⓑ 国家家力(王)は、「法の下」
⑵ 誓約・宣誓の仕方
① 誓約・宣誓とは
㋑ 誓約とは、誓って約束することです。あるいは、固く誓う、その誓いのことです。
㋺ 宣誓とは、自己の言明が真実であること、規範に則して行動することを宣明することです。
② 宗教の世界
㋑ 「神・仏・天」=「万物の根源である神」が基準。
㋺ 完全に事実を掌握する神に対して誓うことは、
Ⓐ 単なる人間の一方的な言明に留まるものではなく、
Ⓑ 「神との契約(結縁)」となり、偽証・不正・違反などに対する制裁を招くことになります。
③ 無神論・無宗教の世界
㋑ 存在の絶対的な根拠は、何もありません。
㋺ 終局的に「自己」が絶対となります(究極の利己主義)。
Ⓐ 自己・自己の良心・自己の信念にかけて誓うことになります。
Ⓑ あくまでも「自己責任」の限度。
Ⓒ 現在社会では、「金(金銭、財産、経済的価値)」が基準。
⑶ 「善悪」「正義」とは
① 宗教の世界
㋑ 万人に共通の神の意思が基準。
㋺ 客観的な善悪・正義であり、絶対的な善悪・正義。
② 無宗教の世界
㋑ 自己の心の問題となり、主観的な善悪・正義。
㋺ 人によって基準が異なる相対的な善悪・正義。
㋩ 無宗教の世界では、神に代わるものを求める傾向があり、それが「金」。
⑷ 聖書における善と悪
① 「禁断の木の実」
・ ㋑ 「エデンの園」に「生命の木」と「善悪の知識の木」。
・ ㋺ 神と人間(アダム)は、「善悪の知識の木の実を食べない」契約。
・ ㋩ 悪魔の教唆に乗った人間は、神との契約に違反して、善悪の知識の木の実を摂食。
② 罪と善悪の基準
・ ㋑ 神との契約違反(罪)の結果、神を否定し、神の法を否定。
・ ㋺ 善悪の基準である神の法を否定し、人間が自己を善悪の基準とする。
・ ㋩ 人間が神に代わって神となる。「自己神論」。
・ ㋥ 「無神論」とは、単に神を否定するだけでなく、実は「自己神論」。
③ 信仰者と無信仰者の違い
・ ㋑ 信仰者は、神仏を善悪判断の基底に据える。
・ Ⓐ 常に、神仏の意思、神仏の教えに基づいて判断し、行動する。
・ Ⓑ 状況に左右されず、ブレない人生を歩む。
・ Ⓒ 「お陰様で」「神の御加護」「神のお導き」「お大師様のお守り」など。
・ ㋺ 無信仰者は、自己を善悪判断の基準とする。
・ Ⓐ 人間の知識・経験には限界があり、限界内での判断とならざるを得ない。
・ Ⓑ 人間の嗜好や好み、その時の気分次第で、判断が異なる可能性がある。
⑸ 正義の問題
① 「自己責任」
・ ㋑ 宗教を否定する現代日本のキーワード
・ ㋺ 「成功」したら、努力した・頑張った・自己の成果
・ ㋩ 「失敗」したら、努力を怠った・努力が足りなかった自己の責任
② 「与えられた生き方」
・ ㋑ 宗教者の生き方として、「神に導かれた道」「摂理」
・ ㋺ 「成功」したら、神の成果
・ ㋩ 「失敗」したら、神の成果
・ ㋥ すべての労働・労苦・仕事に意味がある。
⑹ 判断の基準
① 「法」は判断の基準
・ ㋑ 事理・事物を判断するには、一定の基準が必要です。
・ ㋺ 社会の法律、学校の規則、家庭の決まり、友人間の約束など。
・ ㋩ 自然科学の法則、社会科学の理論、心理学の定説など。
・ ㋥ 宗教は、神など宗教の根源に基礎が置かれ、基準が定められています。
② 宗教者の判断
・ ㋑ 宗教を否定する唯物論者の判断基準は、
・ 「自己」「人間」「金銭」「団体」など、「人間的な基準」です。
・ ㋺ 宗教者の判断基準は、
・ 絶対的な「神の基準」「宗教の基準」です。
3 神学と法学
⑴ 神学の形成
① 基督教が生まれて、11世紀、ローマの教会(西方教会)とコンスタンティノポリスの教会(東方教会)との神学・実践上の差異が大きくなり、ついに西のカトリック教会と東の正教会(オーソドック教会)とに分裂します(教会の東西分裂)。
② 西方教会は、ラテン語で、ローマ法学を基礎に、神学を形成します(法学的神学)。
③ 東方教会は、ギリシャ語で、ギリシャ哲学を基礎に、神学を形成します(哲学的神学)。
④ ラテン語「カトリカ」は「普遍」という意味であり、ギリシャ語「オルソ・ドクサ」は「正統な教義」という意味です。つまり、「普遍的な教会」と「正統な教会」という意味です。
⑵ 神学と法学
① 新約聖書が閉じられた後、年数を重ねると、社会の変化・地域の拡大に伴い、聖書の適用上の問題が生じます。
② 西方教会では、ローマ法学の「法律の解釈」に範を得た「聖書の解釈」が始まります。
③ 聖書解釈学は、法律解釈学に倣いますが、後に、基督教社会となると聖書解釈学が進み、法律解釈学がそれに倣います。
④ その後も、法律解釈学と聖書解釈学は、相互に学び合い、影響し合いながら、進歩します。
⑶ ローマ法とカトリック教会
① ローマ法は、ローマ帝国の法ですが、帝国の分裂(西ローマ帝国と東ローマ帝国)に伴い、二分します。
② 西ローマ帝国の崩壊後は、ローマ・カトリック教会が、ローマ法の伝統を継承します。
③ ローマ法を扱ったのは、カトリック教会の両法博士(両法=聖法と俗法)たちです。
④ カトリック教会がローマ法を継承したのは、役1000年間です。その間に、両法の同化を図ります。
⑤ 近代になり、ボローニアとパリに大学ができると、以後、法律の伝統は大学が継承することになります。
⑥ 日本の法律は、明治期に、西欧法を継承したものですから、この伝統を継承しています。
・
4 神学と自然科学
⑴ 神の創造
① 「神による創造」とは「神の言葉による創造」を意味し、「神の法による創造」を意味します。
② 「神の法による創造」とは、被造物に「神の法(lex Dei)」を付与することです。
③ 被造物に付与された「神の法」は「lex Dei naturalis(自然に関する神の法)」と呼ばれています。
④ 日本では、それを「自然法則」と呼ばれていますが、自然自身の自律法ではなく、神からの他律法です。
⑵ 近代自然科学
① 近代自然科学は、ガリレオ、ニュートン、コペルニクス、ケプラーによって成立しています。
② 4人とも、熱心な信仰を基礎として、自然科学を確立しています。
③ 「神は偉大な二つの書物を書いた」「一つは聖書であり、他は自然そのものである」。
④ 「自然の中に書き込まれた神の法を一語一語読み取ることが科学者に与えられた崇高な使命である」。
⑤ 「科学の目的は、人々に神に仕える正しい道を示すことにある」。
⑶ 人への神の法
① 人間は、他の被造物(非理性的被造物)とは異なり、神のように「意思」を有するものとして創造されました。
② 非理性的被造物に対する神の法は、一方的に強制的に適用されます。
③ 意思のある人間に対する神の法は、人間の自由意思による遵守が期待されます(違反もありえます)。
④ 人間に対する神の法は、「神と人間との契約」という性質です。
⑷ 神学と近代自然科学
① 神学は、「人間に対する神の法」「神と人間との契約」を対象とします。
② 自然科学は、「非理性的被造物に対する神の法」「自然に関する神の法」を対象とします。
③ 神学も自然科学も「神の法」を対象とするものです。
⑸ 神の聖定
① 神は、天地創造の前に、「世界の創造」と創造後の「世界の統治」を定めています(聖定)。
② 神が自然を統治するのは、その場その時での対処ではなく、あらかじめ定めたルール(法)によります。
③ 神の法は、一回限りの聖定によりますので、事後、変更・改正・廃止されることはありません。
⑹ 自然法則(自然に関する神の法)
① 「自然法則」は、自然に内在する自律の法ではなく、神からの他律の法です。
② 自然法則は、自然の創造に際して、自然に付与された神の法です。神の創造は法による創造です。
③ 神を否定した唯物論・物質主義の自然観との根本的な違いです。
⑺ 神の摂理
① 神の摂理は、自然・世界に生起する一切の事象をあらかじめ定めた神の法です。
② 神の摂理は、自然や世界の運行、現象、事象、事件、事故などあらゆる出来事を定めた法です。
③ 神の摂理は、あらかじめ定められている法ですが、人間がその内容を知ることはできません。
⑻ 宗教者と無宗教者
① 宗教者は、自然法則を神の法と捉えます。
② 無宗教者は、自然法則すら、人間の手で改変しようとします。
③ 無宗教とは、自己を神とする「自己神論」だからです。
・
5 『キリスト教法理学序説』
櫻井圀郎『キリスト教法理学序説』(東京基督神学校・修士論文、1983年)
Ⅰ 緒言
1 「キリスト教法理学」の意味
⑴ その名称
⑵ 法の意義
⑶ 範囲
2 「序説」の目標
Ⅱ 「法」の理念及び「法」の理解の諸相
1 聖書における「法」
⑴ 旧約聖書のおける用語
⑵ 契約と法
⑶ 預言者と法
⑷ 新約聖書における用語
⑸ キリストと法
2 トマス・アクィナス「神学大全」Prima Seundae Qu 90-105の要約
⑴ 総論
ⅰ 「法」とは
ⅱ 法と理性の関係
ⅲ 法の目的
iv 法の原因
ⅴ 法の公布
⑵ 各論
ⅰ 永遠法
ⅱ 自然法
ⅲ 人定法
iv 神法
ⅴ 旧法と新法
ⅵ 罪の法
ⅶ 永遠法の再検討
3 カルヴァン「キリスト教綱要」1ーⅢの概察
⑴ 創造主なる神と法
ⅰ 自然本来の秩序
ⅱ 摂理
ⅲ 神の愛
⑵ 人間の救いと法
ⅰ 神の真理の法
ⅱ 罪と刑
ⅲ 理性の機能
iv 法の種子
v 創造の法
ⅵ 自然法
ⅶ 律法
⑶ 信仰と法
ⅰ 罪と無秩序
ⅱ 告解の法的根拠
ⅲ キリスト者の生活の規範
iv 正と不正
ⅴ 自由と統治
ⅵ 祈りの規律と祈りの規範
ⅶ 義の最高の規範
4 キリスト教哲学における「法」
⑴ 創造の原理
⑵ 「法」の概念
⑶ 法の秩序
5 日本人の「法」の理解
⑴ 序
⑵ 法の観念
⑶ 西欧と日本の法観念
⑷ 日本独特の法観念
⑸ 日本人の法観念と伝道、牧会
Ⅲ 教会史の中における「法」
1 中世以前
⑴ 新約聖書時代
ⅰ アナニヤとサッピラの事件
ⅱ 執事職の創設
ⅲ エルサレム会議
⑵ 使徒後教父時代
⑶ 古カトリック教会時代
ⅰ 序
ⅱ 教会の制度の確立
ⅲ 新約聖書正典の確立
iv 使徒信条の作成
ⅴ 教会法
ⅵ 国教化と教会法
⑷ 中世
ⅰ 修道院法
ⅱ 国家法と教会法
ⅲ 教会法の権威
iv 教会法学
2 宗教改革時代
⑴ ルター
ⅰ 「九十五箇条の提題」
ⅱ 信仰義認と教会の権威
ⅲ 聖書の権威と教会法の権威
iv メランヒトン
ⅴ アウグスブルク信仰告白
⑵ アナバプテスト
⑶ カルヴァン
ⅰ 教会改革規則
ⅱ 国家と教会の関係
ⅲ 教会規則
iv 規則の改正
ⅴ 規則の効力
3 カルヴァン「キリスト教綱要」Ⅳの概察
⑴ 母なる教会
⑵ 教会の制度
ⅰ 教会の規律
ⅱ 統治の秩序
ⅲ 教会法
iv 教職制度
ⅴ 教会秩序の腐敗
⑶ 教会の権能
ⅰ 「教理」
ⅱ 法規を制定する権能
㋑ 良心を拘束する権能
㋺ 人間の規定
㋩ 唯一の立法者
ⅲ 教会の規律
㋑ 規律の必要性
㋺ 規律の限界性
㋩ 規律の条件
㋥ 規律の余地
㋭ キリスト者の義務
4 近世
⑴ 正統主義
ⅰ 教条的正統性の主張
ⅱ 制度としての教会
⑵ 敬虔主義
⑶ 啓蒙主義
⑷ 自由主義
⑸ バルト神学
5 「日本基督教団」
⑴ 成立過程
ⅰ 時代背景
ⅱ 宗教政策
ⅲ 宗教団体法準拠法人
⑵ 組織
ⅰ 教団の機構
ⅱ 教会の型
ⅲ 教団規則の性格
Ⅳ 教会論における「法」の問題
1 教会の権能
⑴ 教会権能の源泉
⑵ 教会権能の性質
⑶ 教会権能の分類
ⅰ カルヴァンの分類
ⅱ ヘッペの分類
ⅲ ベルコフの分類
iv 適わしい分類の試み
㋑ 最高法規としての聖書
㋺ 立法権の意味
㋩ 教会の機関
㋥ 結
⑷ 教会権能の内容
2 教会の統治
⑴ 教会の自律
ⅰ 序
ⅱ 教会の他律性と自律性
ⅲ 教会の自律の意味
iv 自律権の侵害と放棄
ⅴ 教会会議
⑵ 教会の秩序
⑶ 教会の法治
⑷ 教会の法の分類
ⅰ 成文法と不文法
ⅱ 神定法と人定法
ⅲ 信仰の規範
iv 政治、礼拝の基範
ⅴ 分類の目的
Ⅴ 「本論」への提言
1 「序説」の総括
⑴ 被造物世界を律する神の法
⑵ キリスト教神学における「法」の概念
ⅰ 聖書の「法」性
ⅱ 聖書における「法」概念の使用
ⅲ 神学における「法」概念の援用
⑶ 教会を律する「法」
2 現実の問題
⑴ 神学の分野において
⑵ 教会の法の分野において
ⅰ 教会の法の絶対化
ⅱ 形式の物真似
ⅲ 教理との矛盾
⑶ キリスト者の社会生活において
⑷ 国家法の援用において
⑸ 国家法の意図において
3 「本論」への提言
⑴ キリスト教法理学の方向性
⑵ キリスト教法理学の貢献
ⅰ 神学
ⅱ 実践神学
ⅲ 法学
㋑ 「教会の法」学
㋺ キリスト教法学
㋩ 教会に仕える法学
・
6 『Law and Charisma in the Reformed Ecclesiology』
『Law and Charisma in the Reformed Ecclesiology: Calvin and Contemporary Theologians』 by Kunio Sakurai
Fuller Theological Seminary, Center for Advanced Theological Studies, 1993
Ⅰ Introduction
1 General Introduction
2 Reformed Tradition and Charismatic Movement
⑴ The Reformed Tradition
⑵ The Charismatic Movement
3 Purpose and Structure of the Thesis
Part I Calvin's Understanding of Law and Charisma
Ⅱ Law
1 The Concept of Law
⑴ Order as Law in General
⑵ The Law of Creation
⑶ The Political Law
2 The Church Law
⑴ The Church for Salvation
⑵ The Church as the Kingdom of Christ
⑶ The Order of Church
⑷ The Law of the Church
3 Summary
Ⅲ Charisma
1 The Work of the Holy Spirit
⑴ In the Creation and the Providence
⑵ In the Human Being
⑶ In the Church
2 The Concept of Church
⑴ The Church as the Body of Christ
⑵ The Election of Officers
⑶ The Church Council
3 Summary
Ⅳ Conclusion
Part Ⅱ Contemporary Understanding of Law and Charisma
Ⅴ Otto Weber
1 Law
⑴ The Concept of Law
a The Decree of God and the Covenant
b The Law of God
c The Political Law
⑵ The Concept of Church
a The "Community"
b The "Church"
c The "Assembled Community"
⑶ The Law of the Community
2 Charisma
⑴ The Work of the Holy Spirit
a In General
b In Salvation
c In the Community
⑵ The Grasp of the Community
a As a Pneumatic Reality
b The Leadership of the Community
c Church Council
3 Summary
Ⅵ Juergen Moltmann
1 Church
⑴ The People of God
⑵ In the Church an Institution?
⑶ The Rule of the Church
⑷ The Politics of the Church
2 Charisma
⑴ The Presence of Jesus Christ
⑵ The Work of the Holy Spirit
⑶ The Presence of the Holy Spirit
⑷ Charismatic Community
3 Law
⑴ The Order in the Community
⑵ The Constitution of the Community
⑶ The Rule of Christ
4 Summary
Ⅶ Conclusion
1 Calvin, Weber, and Moltmann
⑴ Calvin and Recent Trend
⑵ Weber
⑶ Moltmann
2 Conclusion
・
・
(米国カリフォルニア・ロサンゼルスにて)
Ⅱ 宗教の法
1 基督教(キリスト教)
⑴ 「聖書」
・ ① 「聖書は、信仰と生活の唯一の規範である」とされています。
・ ② 「聖書」が、宗教活動だけでなく、社会生活においても、「最高の法」とされています。
・ ③ 「聖書」は、「神の霊感」によって書かれた「神の法」だからです。
⑵ 信仰告白
・ ① 「聖書」の教理を総括し、簡潔に表現したものとして、「信仰告白」があります。
・ ② 「使徒信条(使徒信経)」= ほとんど全ての基督教会(キリスト教会)が採用しています。
・ ③ 「信仰告白」= プロテスタントの多くの教派・教団・教会が、独自の「信仰告白」を出しています。
・ 改革派系 「ウェストミンスター信仰告白」「ハイデルベルク信仰問答」など
・ ④ 「信仰問答」
⑶ 口伝・教皇令
・ ① カトリック教会
・ ②
⑷ 教会法
・ ① カトリック教会の「教会法」
・ ㋑ カトリック教会はヴァチカン教皇庁を頂点とする全世界の一つの教会ですから、全世界の教会基本法です。
・ ㋺ 公用語はラテン語なので、日本では、ラテン語と日本語の対訳の『教会法』が用いられています。
・ ② プロテスタント教会の「教会憲法」
・ ㋑ 教派・教団・教会により、「憲法」「教憲」「教規」「教会規程」「政治基準」など呼称は様々です。
・ ㋺ 米国、英国。独国、仏国、西国などを本部とする教派にあっては、英語、独語、仏語、西語などの教会憲法が正本とされています。
⑸ 教会法の体系
・ ① 各教団などにおいて、教会法の体系を明確にし、その制定・改廃の手続きや施行に関することを明瞭にしておくことが必要です。
・ ② 例 示:
・ 一 全国法 1 憲 法 ⑴ 憲法総則
・ ⑵ 憲法各則
・ 礼拝指針
・ 訓練規定
・ ⑶ 憲法細則
・ 2 規 準
・ 3 準 則
・ 4 宣 言
・ 5 見 解
・ 6 委員会規則
・ 7 委員会細則
・ 二 地方法 1 規 程
・ 2 委員会規則
・ 3 委員会細則
・ 三 地区法 1 規 則
・ 2 細 則
・ ③ 意 味:
・ 全国法 = 教派・宗派・教団・大会など全体に適用される法
・ 地方法 = 教区・地方会・中会・修道会・宣教会などにのみ適用される法
・ 地区法 = 神社・寺院・教会・伝道所・修道院・祈祷院などにのみ適用される法
2 仏教
⑴ 「ダルマ」
・ ① 梵語「ダルマ」とは
・ 「保つ」を意味する「ダル」から派生した語で、
・ 「同じ性格を保つもの」という意味です。
・ ② 「ダルマ」には、次の5種の意味があります。
・ ㋑ 「法則」「正義」「基範」
・ ㋺ 「仏法(仏陀の教法)」
・ ㋩ 「徳」「属性」
・ ㋥ 「因」
・ ㋭ 「事物」
・ ③ このうち、「仏法」と「事物」とは、仏教独自の用法です。
・ ㋑ 「法会」=「仏を供養する行事」
・ ㋺ 「法要」=「仏法の要」(転じて「仏教の儀式」)
・ ㋩ 「法衣」=「僧侶の衣服」
・ ㋥ 「法喜」=「仏法による喜び」
・ ㋭ 「法語」=「仏法の言葉」
・ ㋬ 「法器」=「仏法を受ける能力(のある人)」
・ ㋣ 「法爾」=「事物のあるがままの状態」
・ ㋠ 「法事」=「仏を供養し、教えを説き、仏の威徳を称える行事」
・ ㋷ 「法輪」=「仏が説く教え」
・ ㋦ 「法楽」=「仏法による楽しみ」
・ ㋸ 「法身」=「真理の身体」、など。
⑵ 「戒律」
・ ① 「戒律」=「戒」+「律」= 僧伽(宗教団体)における修行規範。
・ ② 「戒」= 真の自己実現のための修行に関する自律的決心。
・ ㋑「授戒」「受戒」(戒を授け、戒を受けること)
・ Ⓐ 出家して「沙弥(しゃみ)」となり、受戒して「比丘(びく)」となる。
・ Ⓑ 受戒した者に与えられる名が「戒名」。
・ ㋺「五戒」
・ Ⓐ 在俗信者の保つべき最低限度の戒。
・ Ⓑ 「不殺生戒」
・ 「不偸盗戒」
・ 「不邪婬戒」
・ 「不妄語戒」
・ 「不飲酒戒」
・ ③ 「律」= 僧伽における生活規範。
⑶ 「仏法」
・ ① 「仏法」=「仏の教え」「仏の真理」
・ ② 「三宝」=「仏」+「法」+「僧」=「仏法僧」。
3 神道
・ ① 神の意思を窺う「神判」が、女王卑弥呼ら巫女の手に。
・ ② 「祝詞(のりと)」は、神からの託宣である「法(のり)」を意味。
4 イスラーム
・ ① 『クルアーン(コーラン)』を最高法規とする。
・ ② イスラーム法「シャリーア」。
・ ③ 「イスラームの概要」ページを参照。
5 諸宗教
・
・
(エジプト・壁画)
Ⅲ 「信教の自由」
1 「信教の自由」とは
・ ① 「信教の自由」とは、「宗教の信仰」に関して、
・ ㋑ 法律上の規制を受けることなく、
・ ㋺ 専ら自己の自由意思により、
・ ㋩ これを信じまたは信じないことです。
・ ② 日本国憲法においては、「基本的人権」として、
・ ㋑ 「不可侵の永久の権利」として(11条)、
・ ㋺ 「何人に対しても保障」されています(20条)が、
・ ㋩ 「不断の努力」によって「保持する義務」(12条)を有します。
・ ③ 「信教の自由」には、
・ ㋑ いかなる宗教を信じる自由、
・ ㋺ いかなる宗教も信じない自由、
・ ㋩ 2以上の宗教を重ねて信じる自由、
・ ㋥ 2以上の宗教を交互に信じる自由、
・ ㋭ 自ら新しい宗教を立てる自由を含みます。
・ ④ 「信教の自由」には、
・ ㋑ 他の宗教を容認する義務はありませんが、
・ ㋺ 他の宗教を否定することは、「信教の自由の否定」につながります。
・ ⑤ 「信教の自由」とは、
・ ㋑ 国家やいかなる組織・機関、いかなる集団やいかなる人からも規制されることなく、
・ ㋺ 宗教を信じる自由のことです。
2 個人の「信教の自由」
・ ① 「信教の自由」の根本は、
・ 個人の「信教の自由」です。
・ ② 未成年者の信教の自由は、
・ ㋑ 親権者の親権の範囲内で一定の制約が生じますが、
・ ㋺ 年齢に従い、徐々に、本人の自由意思に委ねていく必要があります。
・ ③ 園児・児童・生徒・学生・研修生・受講生らの信教の自由は、
・ ㋑ 学校・教育機関の教育目的上一定の制約が生じるのはやむを得ませんが、
・ ㋺ 必要最小限度でなければなりません。
・ ④ 労働者・従業員の信教の自由は、
・ ㋑ 労働契約に明示された労働・業務の目的・内容による制約は可能です(自由意思による契約)が、
・ ㋺ 妥当な範囲内に限ります。
・ ㋩ ただし、国家公務員・地方公務員には適用されません。
・ ⑤ 選択の自由のない国家の国民・地方公共団体の住民・地縁団体の居住者・マンションの住人などに対する制限は厳しく吟味されなければなりません。
・ ⑥ 信教上の行為が犯罪行為・違法行為・不正行為・不法行為にあたる場合は、法律の規定に従うことになります。
3 信者の「信教の自由」
・ ① 宗教団体の内部においても、信者の信教の自由は保障されます。
・ ② 宗教団体における信者の行為は、常に、信者の信教の自由に基づく行為であり、個人の自由意思によるものです。
・ ③ 宗教団体における宗教上の権威や指導は、信者の意思を拘束する指揮・命令でありません。
・ ④ 信者は、宗教団体において、宗教上の権威や指導に従うものですが、あくまでも宗教者としての個人の自由意思に基づくものです。
・ ⑤ 信者は、信教の自由があっても、宗教団体の内部において宗教団体の秩序を妨害することは許されません。
4 宗教職・宗教専門職の「信教の自由」
・ ① 宗教職・宗教専門職も、
・ 宗教団体の内部において、信教の自由を有します。
・ ② 上級の宗教職・宗教専門職の指導は、
・ ㋑ 俗世における指揮・命令とは異なり、
・ ㋺ あくまでも宗教者としての個人の自由意思に基づくものです。
・ ③ 宗教職・宗教専門職は、
・ ㋑ 信教の自由があっても、
・ ㋺ 宗教団体の内部において宗教団体の秩序を妨害することは許されません。
5 宗教団体の「信教の自由」
・ ① 宗教団体は、
・ ㋑ 法律の規定にかかわらず、
・ ㋺ 特定の宗教の教義・教理・理念・伝統・慣習などを宣揚し、
・ ㋩ 人々に布教伝道し、教育指導、教化育成、修行訓練などをし、
・ ㋥ 崇敬礼拝、祈願祈祷、厄除祓罪などを、自由に行うことができます。
・ ② ただし、それぞれの場面において、公法上および私法上、種々の制限を受けます。
・ ③ 行政上・司法上の命令によって、宗教活動の変更・延期・中止・廃止などを強いられることはありません。
・ ④ 宗教活動の変更などが強いられる施設・機関の利用などに関する法律上の規制については、
・ 法律の目的上妥当な範囲内なら受忍するのが相当です。
・ ⑤ 法律の規定による行政上の要請により、宗教活動の変更などが求められる場合、
・ ㋑ 強制でなければ、信教の自由の制限とはなりませんが、
・ ㋺ 事実上、強制に近いものであれば、信教の自由に抵触することもあります。
・ ⑥ ただし、
・ ㋑ 災害被害の防止、社会の秩序や平穏、健康の保持、感染症の防疫、犯罪の防止、平和の維持などを目的とするものであれば、
・ ㋺ 「宗教活動の一環」「宗教的理念の発動」「宗教者の社会的責任」「衆生救済」という観点から、
・ ㋩ 自主的な対応を考えることも求められましょう。
・
〇 新型コロナウイルス感染症「緊急事態宣言」と「信教の自由」
① 「新型コロナウイルス感染症」は、2年間限定で、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象とされました。
② この特措法による「政府対策本部」等が設置され、「緊急事態宣言」が発せられました。
③ 現在、都道府県知事による「外出・集会・移動などの自粛要請」が出されています。
④ 外出および集会の自粛要請は、直ちに「信教の自由」に抵触するものではありませんが、事実上の強制になると問題です。
⑤ 一人一人が、自己の行動のもたらす影響を考えて、自由意思による自己判断が求められます。それこそ「信教の自由」です。
⑥ 宗教者・宗教団体も、政府・行政に唯々諾諾と従うのではなく、自由・自主的な判断で対処する必要があります。
⑦ 感染症の感染拡大の防止や信者・関係者・衆生・社会一般の罹患防止の観点から、是々非々を判断することが求められています。
⑧ 根本に据えなければならないのは、宗教の教義・教理であり、歴史・伝統であり、信仰・信念です。
⑨ 他方、「公共の福祉」との衡平を図る観点も試されます。「自利利他」の実践が試されます。
⑥ 「宗教者の社会的責任」が発露される場面でもあります。
・
(カトリック中央協議会・会館の桜)
Ⅳ 「聖俗の分離」
1 宗教と国家
⑴ 宗教の法(聖法)と国家の法(俗法)
・ ① 「宗教の法(聖法)」と「国家の法(俗法)」とは分離されています。
・ ② 聖法が俗法によって規制されることはありません。
・ ③ ただし、聖法に基づく行為が俗法に抵触する場合には、行為者に俗法が適用されます。
・ ④ 俗法の適用は、あくまでも行為者個人に対してです。
・ ⑤ 「信教の自由」が徹底されている限り、個人の行為が宗教団体に及ぶことはありません。
⑵ 宗教の契約と世俗の契約
・ ① 宗教における神仏と信者との関係は「聖約(聖なる宗教上の契約)」として捉えられています。
・ ② 基督教における「神と民との契約」「贖いの契約」「恵みの契約」「救いの契約」「基督との契約」など。
・ ③ 基督教における契約としての「洗礼」「ミサ」「聖餐」「主日礼拝」など。
・ ④ 猶太教における契約としての「割礼」「安息日」「犠牲」など。
・ ⑤ 仏教における「仏との結縁」「灌頂」など。
・ ⑥ そもそも、地上における「契約」は「聖約」が世俗化されたものです。
・ ⑦ 例えば、「意思主義契約法」「不法行為の原状回復義務」など。
・ ⑧ しかし、「宗教の契約」を「世俗の契約法」で解釈するのは正当ではありません。
・ ⑨ 強行規定に抵触しない限り、「宗教の契約」は「宗教の論理」に従い、「世俗の法律」が及びません。
⑶ 「信教の自由」の徹底
・ ① 「信教の自由」は、国家・地方自治体・地縁団体などにおいて徹底されなければなりません。
・ ② 「信教の自由」は、親族・家族・企業・学校・同好会などにおいて徹底されなければなりません。
・ ③ 「信教の自由」は、宗教団体相互の間においても徹底されなければなりません。
・ ④ 他の宗教団体を誹謗中傷する宗教団体は、「信教の自由」を否定しています。
・ ⑤ 「信教の自由」は、宗教団体の内部においても徹底されなければなりません。
・ ⑥ 「信仰すること・しないこと」「信仰による行為をすること・しないこと」は「信者の自由」です。
・ ⑦ 信者が、指揮命令・監督下にあれば、「信教の自由」があるとは言えません。
・ ⑧ 一人一人の個々人の「信教の自由」が「宗教の根本」です。
2 宗教法人と会社・法人
・ ① 宗教法人も、株式会社・社団法人・財団法人なども、「法人」として同じと思われますが、違います。
・ ② その根本には「信教の自由」があり、「聖俗分離の原則」があるからです。
・ ③ 「宗教法人」は、「宗教活動を行う宗教団体」の「財務・財産管理など世俗の事務」を行う法人です。
・ ④ 「宗教法人」は「宗教団体」に付与された法人格ですが、宗教団体の全てを行うことができません。
・ ⑤ 宗教法人の役員には「宗教上の権限」がないからです。
・ ⑥ 一体でありながら、「宗教団体」と「宗教法人」という聖俗の分離があります。
・
Ⅴ 宗教非課税の原則
1 宗教の聖性
・ 宗教の領域は、世俗の領域から区別され、聖別された神仏の「聖域」です。
2 宗教の非営利性
・ 宗教は、営利を目的としない、「非営利」の活動です。
3 宗教の公益性
・ 宗教は、私益を目的としない「公益」の活動であり、「公益」の典型です。
4 信教の自由の保障
・ 「信教の自由」の原則から、聖域である宗教には、世俗の権力の介入が抑えられています。
・ 宗教に課税することになれば、宗教内部の秘儀である宗教活動を課税当局に報告(申告)することが必要となり、宗教活動について課税当局の調査権が入ることになり、信教の自由が犯されることになります。
・ 宗教に対する非課税は、宗教団体に対する優遇ではなく、宗教団体に必然の取り扱いです。
5 法人の税
⑴ 法人税
⑵ 固定資産税・都市計画税
⑶ 登録免許税
⑷ 利子所得税
⑸ 関税
⑹ 消費税
⑺ 事業税
⑻ 事業所税
⑼ 法人住民税
⑽ その他
6 個人の税
⑴ 所得税
⑵ 事業税
⑶ その他
・
(米国カリフォルニア州「カリフォルニアミッション」の一つ)
Ⅵ 宗教と国家
・
Ⅶ 宗教と社会
1 ダイバーシティ・多様性
⑴ 社会の多元性
㋑ 「ダイバーシティ」とは、「多元性」「多様性」「多元論」という意味です。
・ ㋺ この世界は、多種多様な「多元の社会」です。
・ ㋩ 「多元の社会」における「多元の価値観」が求められています。
⑵ 社会の多元性と社会のルール
㋑ 多元な社会にあっても、社会としては「共通のルール」が必要です。
・ ㋺ 当然、どの社会にあっても、「共通のルール」があります。
・ ㋩ 「ダイバーシティ」とは、「社会のルール」を無視し、「社会のルール」を破壊することではありません。
⑶ 社会の多元性と宗教の一元性
㋑ 多種多様・多元の社会にあっても、「宗教の一元性」は守られています。
・ ㋺ 「宗教の一元性」とは、多元の他者を否定することではなく、「自己の一元性」を主張することです。
・ ㋩ 社会のダイバーシティの中に埋没しては、宗教は存在し得ません。
2 SDGs・サステナビリティ
⑴ 社会の持続化
㋑ 「SDGs」「サステナビリティ」とは、「持続」「持続化」という意味です。
・ ㋺ 「使い捨て社会」「環境破壊」などに対する反省から生まれてきました。
・ ㋩ 「有限の資源」の保護や有用活用を目指しています。
⑵ 世界の持続化
㋑ 五感で感知できる世界は、物質である以上、「有限の世界」です。
・ ㋺
⑶ 宗教の持続化
㋑
・ ㋺
・
3 LGBT
⑴ 「LGBT」とは
㋑ 「LGBT」とは、
Ⓐ Lesbian(レズビアン)
・ Ⓑ Gay(ゲイ)
・ Ⓒ Bisexual(バイセクシャル)
・ Ⓓ Transgender(トランスジェンダー)
㋺ LGBは「性的指向」の問題です。
・ 恋愛対象が、男女いずれの姓に向かうかという問題です。
㋩ Tは「性自認」の問題です。
・ 自己の肉体的性が心的性と異なることです、
⑵
⑶ 宗教における性別
㋑ 宗教においては、「性別」は重要な要素の一つです。
㋺ 「性別の否定」は、「宗教の教義」を否定し、「宗教の否定」につながります。
㋩ 性別の基本教義の上に立った対応が必要です。
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Ⅷ 宗教と倫理
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Ⅹ 「宗教と法」に関連する著書・論文・記事・講演
櫻井圀郎「キリスト教法理学序説」(東京基督神学校)
櫻井圀郎「日本社会と神の法」『神と世界と日本と』(共立基督教研究所)
櫻井圀郎「日本における法と信仰」『神と世界と日本と』(共立基督教研究所)
櫻井圀郎「神の世界とキリスト者」『神と世界と日本と』(共立基督教研究所)
櫻井圀郎「日本人の法意識と信仰」(米国カリフォルニア州サクラメント教会)
櫻井圀郎「日本人の法意識と聖書の信仰」(東京キリスト教学園)
櫻井圀郎「キリスト教弁証学序説」(東京基督教大学)
櫻井圀郎「キリスト教弁証学」(東京基督教大学)
櫻井圀郎「弁証学」(東京基督神学校)
櫻井圀郎「契約神学」(東京基督神学校)
櫻井圀郎「牧会伝道と法知識」(クリスチャン新聞)
櫻井圀郎「伝道牧会と法知識」(「法と神学」のミニストリーズ)
櫻井圀郎「宗教と法律の基本」『僧侶のリーガルマインド』(臨済宗相国寺派)
櫻井圀郎「宗教とは」『宗教と法律』(寺門興隆)
櫻井圀郎「宗教と自由」『宗教と法律』(寺門興隆)
櫻井圀郎「宗教と法律」『宗教と法律』(寺門興隆)
Kunio Sakurai, Law and Charisma in the Reformed Ecclesiology( Fuller Theological Seminary)
Kunio Sakurai, "Law, Legal Thought and Missions" in Evangelical Dictionary of the World Missions (Baker)
・
Carl F.
Kabnsug, Legal Defense Handbook(『法的な備えのハンドブック』)(Navpress Books, 1992)
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(ロシア正教)